時と翼と英雄たち


〜伝説〜







 勇者は歩む 己が選んだ道を
 聖女は欲す 歪みなき絆を
 賢者は問う 光への出口を
 乙女は祈る 時の奇跡を

























 死よりも辛い生を味わうのは僕だけでいい。
だから彼には・・・、たった1人のかけがえのない弟には決して手を出さないでほしい。
彼に降りかかる災厄はすべて僕が引き受けよう。
僕が得る喜びや幸福は、すべて彼に捧げよう。


 僕の願いはただひとつ。
アレフガルドが、永きに渡って見続けている悪夢から醒めること。
願いが叶うのならば、僕は世界中の人々から嫌われ忌まれ、憎まれても構わない。
我らが愛しき精霊ルビスよ。
この愚かな人間の願いを、我が命をもって叶えて下さるよう。























 遂に、彼が言う『この時』がやって来たらしい。
止まったままの時間が軋む音を立てながらゆっくりだけれども確実に動き出す、彼が待ち望んだ『この時』がすぐそこまで迫っているらしい。
それはとても、この世界にとっては喜ばしいことだと彼は話してくれた。
笑ってもいた。
でも、僕は上手く笑えなかった。
だってそうだろう?
時間が動き出すということは、今ですらあやふやなものになっている君という存在がもっと速いスピードで消えゆくってことなんだろう?
僕には魔物を倒す強さも、仲間を守る力もない。
いつも守ってもらってばかりだ。
君にはかけがえのない家族がいて、家族と愛するこの世界のためにと考えているんだろうけど、君は僕の大切な親友なんだ。
僕は忘れたくない。
たとえ『この時』がやって来て時間が君を無情にも消してしまうことがあっても、僕だけは絶対に、何があってもずっと忘れない。
忘れてなんかやるもんか。
僕だけは君を、プローズのことを記憶に刻みつけておく。
そのくらいは許してくれるよね。
だって、君は本当はとても優しいんだから。

























 賢者は願う 悪夢の終焉を







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