スペースデブリにロングシュート ~NG集宇宙人編~










 いい加減、没ネタは没なりに別に保管しておくとか、そういったことはできないのか。
毎度のこの時期になるとわあわあ言いながらゴミ箱(正確には不要紙入れ)を漁って、学習能力がないにも程がある。
半田はなんとか発掘したらしい没ネタを整理しているに声をかけた。




「なんか今回まるっきり内容違うじゃん」
「ほとんど一発書きで、DEなるにはガイドラインだけ改から真って進化させたから、意外となかった」
「しかも没シーンはキャラバン組ばっかだな。道理で俺たち出ずっぱりだったわけだ」
「市場調査したり教えてもらった情報だけど、連載でここまで半田が出たやつなかったらしいよ。
 一説によれば、半田と同じカラーリングした別ジャンルのイケメンさんと作者が途中から勘違いして書いたんじゃないかとか・・・」
「何だよそれ、そこは素直に俺にしたって言ってくれよ! ほんっとお前親友に容赦ないな!」
「まあ、そういう細かいことは置いといて、ちょっとこれ見てよ半田」




 は没ネタとは別の紙を取り出すと半田に突きつけた。
紙に記された内容を見た半田の顔がさあっと蒼ざめる。
マジかと尋ねられたのでマジと答えると、半田はやだよと叫んだ。
まったく、人の真正面で突然大声を上げるのはやめてほしい。
耳がおかしくなったらどうしてくれるのだ。
は紙の一部分を蛍光ペンで印をつけた。




「・・・本気か?」
「おう」




 やめろって言ってもやめなかったんだろうな、こいつのことだから。
半田は現実逃避のためにも、没ネタを読み返すことにした。












・NGその1.『23.テレフォン保健室』より

(本編からは全カット。冒頭らしい)




 宇宙人を倒すため雷門中を出たサッカー部員たちをただ1人見送ってくれたあの子も、もしかしなくても宇宙人なのではないだろうか。
円堂たちは奈良県はシカ公園で発見した黒いサッカーボールを手に、ほとんど同じ疑問を抱いていた。
重くて10秒と持つことが叶わない宇宙人ご用達のサッカーボールを片手で持ち歩いていたが恐ろしい。
実はとんでもなく力持ちだったのだろうか。




「いや、なんつーか・・・、って人間、なんだよな?」
「宇宙人を幼なじみにした覚えはない」
「そうだぞ円堂。あの時のはちょっと怒ってただけなんだ。可愛いじゃないか、俺たちのためにぶち切れてくれて。あんないい子そういないんだぞ」
「風丸、いい加減に対する認識を改めたらどうだ」
「・・・そ、そうだよな! に知られたら大変だったよ、ごめん豪炎寺、風丸」
「まったくだ。こんな馬鹿馬鹿しい話でに嫌われたらどうするんだ、円堂」




 東京に置いてきた元気な友人を思い出し、円堂たちはふっと気を緩めた。
新しい女性の監督はそれはもう、きつい性格の持ち主だった。
初対面の相手をお子様と言ったり貶したりと、仲良くするつもりなどさらさらなさそうだった。
10年後のってこんな感じなのかなと土門が口にしなければ、うっかり嫌いになるところだった。







没理由:キャプテン死亡フラグのお知らせ
















・NGその2.『26.そうだ、愛媛に行こう』より

(本編からは全カット。26-3の後半に入れたかったらしい)




 スペシャルゲストを1人、連れて来るのを忘れたらしい。
不動が考えたスペシャルゲストは鬼道のかつての仲間である源田と佐久間の2人だったのだが、どうももう1人いたらしい。
もしかしてあれだろうか。
駅で別れてそれきりの、温泉好きな見た目以外はどこも取り柄がない彼女だろうか。
しかし、彼女のどのあたりがスペシャルゲストだというのだ。
確かにあの性格はスペシャルと言うに値する特別おかしな性格だが、真帝国学園の逆襲という華々しい舞台には少し場違いなゲストだ。
サッカーには野球のように始球式などないのだし。
そもそも、なぜ必要なのか詳細を教えなかったから連れて来るのをやめたのだ。
異常性癖者の欲望を満たすために知り合いを貢ぐほど、影山を信奉してはいない。
信奉していないから、彼と同時に宇宙人の力にも手を出したのだ。
まさか力の源をド直球で言い当てられるとは思わなかったが。
あの時に釘を刺したのは、本当に何も考えず口走っていたことに不安を抱いたからだった。
扱いには困るわ人の予定を半日レベルで狂わせるわと疫病神に近い存在だが、影山が目をつけるくらいなのだから実は訳ありの子なのかもしれない。
深く詮索しなかったのは、単にこれ以上付き合っていられなかったからだ。







没理由:この流れでいくと、真帝国戦に突入しそうで手に負えないと思ったから
















・NGその3.『26.そうだ、愛媛に行こう』より

(26-3冒頭)




 半田は電話を握り締め叱り飛ばしていた。
いたらいたで面倒だが、いなかったらいなかったでまた面倒な奴だ。
金属バットを本当に武器として行使したくらいに明白なる不審者と一緒に愛媛に行ったとは、何をどうしたら愛媛旅行になるのだ。
どんなきっかけで一緒に旅行に行くほどに不審者と意気投合してしまうのだ。
あいつ、不審者って言葉の意味わかってんのか。
なんでそんなにバカなんだよと思わず叫ぶと、バカじゃないもんと当然のごとく言い返された。




「鉄パイプをほいほいくれる中学生なんざろくな奴じゃねぇって! 何やってんだ
『だって、金属バットを武器として使うのは野球部に失礼だって言われたら、何か代わりを用意しなきゃでしょ』
「そうだけど! それでもなんで一緒に愛媛行ってんだよ!」
『あ、もしかして半田、可愛いお友だちが来なくて寂しいの?』
「東京からはるばる愛媛のお前に連絡してるのになんで寂しくなるんだよ。なあ、頼むからもう少しまともな生活してくれ」
『何よその言い方、そんな事言うんだったら半田にはお土産なしだからね!』




 ぷつりと切れた携帯を見つめ、ため息をつく。
今更ながら、豪炎寺の心の広さと偉大さを理解できるようになってきた。
ただ単に話を聞き流していたわけではないのだろう。
こんな滅茶苦茶な事を言われ続け、よくノイローゼにならなかったものだ。
よほどのことが好きでないと3日と保たない。
ごくごく普通の一般人である自分がの相手をしているのが奇跡のようにも思えてくる。
起こしていた体を再びベッドに沈めると、隣のベッドに横たわるマックスがにたあと笑う。
意味ありげな笑みが気に喰わなくて何だよと少しぶっきらぼうに尋ねると、仲良しだねぇと言われる。




「他人事だと思ってんだろ」
「だって他人事だしー? 半田のくせに見事に懐かれたもんだねぇ、さすが親友」
「親友ねえ・・・。あいつはんな事ちーっとも思ってないだろうけど!」
「そんなことないんじゃない? ある意味鬼道や豪炎寺よりもハイスペックだし、今の半田」
「からかってるだけかよ」
「ほんとだよ。何も言わずに心配だけ押しつけてくる豪炎寺。それがいいと思ってんのか、豪炎寺のこと何も言わないでさんに癒しを求める鬼道。背負ってばっかじゃん、今の彼女」
「頼もしくもないし、癒し系でもないのにな」
「壊されちゃう前に息抜きさせてやるのが半田の役目。せいぜい頑張りなよ、親友」




 無関心を装っていても、見ているところは見ているのか。
寝たふりをしての宿題に手を差し伸べなかったが、彼も彼なりに案じていたのか。
どんな分野であれ、勘の鋭い友人を持ったものである。
ますますアイデンティティを保つのが難しくなってきた。
それもこれもすべて、人の気も知らず自由奔放に動き回るのせいだ。
夕香はが不在と知ると途端に寂しそうな顔になってしまったし、こんなに小さな子を寂しがらせるなど許しがたい。
行くなら行くで事前に報告してほしいものだ。
されていても、驚きのあまり絶句していただろうが。




「半田、ミカンがお土産に欲しいってさんに言っといて」
「あ、俺もミカン食べたいです!」
「お前らなあ・・・」




 が帰って来たらまずは説教をしなければ。
いつ帰って来るのか訊きそびれたが、どうせ明後日あたりにはひょっこり顔を出すだろう。







没理由:マックスの口調に自信がなかったから
















・NGその4.『31.後ろからふらっと現れて』より

(本編からは全カット。沖縄に行く途中)




 メンバーが抜けたり入ったりと慌ただしい雷門中イレブンだが、新入りの立向居も無事にチームの輪に入ることができたらしい。
同じ1年生ということもあってか、壁山や小暮とはすぐに打ち解けた。
ついでに目金にも絡まれている。
礼儀正しい性格だから、目金のやや変わったテンションに巻き込まれてしまったようだ。
まあいいか、仲良くさせとこう。
円堂はフェリーでわいわいとはしゃぐ1年生たちを温かな目で見守ると、甲板で真っ直ぐ前を見据えていた鬼道の元へ歩み寄った。
ここは1年たちだけにしておこう。
自分がいると立向居はすぐに緊張してしまうし。




「立向居、博多弁喋る女の子は可愛いってほんとっスか?」
「さあ、俺は毎日聞いてるからなんとも」
「ちょっと喋ってみてほしいっス!」
「じゃ、じゃあ合唱コンクールの練習をサボっている男子に怒る女子とか・・・」




 突然のリクエストには驚いたが、これも雷門中流のスキンシップの図り方なのかもしれない。
立向居はこほんと咳払いすると、日常の一幕をできるだけ忠実に演じてみることにした。




「『ちょっと男子、ちゃんと練習せんと優勝できんって言いようやん! ふざけとらんで練習しぃよ!』とか・・・」
「へえ、じゃあ『リーヨ』はいつ使うんだ?」




 立向居たちの会話に面白さを見つけたのか、一之瀬と土門が割って入る。
リーヨと言われ初めはきょとんとしていた立向居だったが、すぐに思い当たったのか笑顔で説明を始めた。




「リーヨは標準語では『~しなさいよ』って意味ですね。だから早く寝なさいなら早く寝りぃよで、勉強しなさいなら勉強しーよになります。
 だから元気になリーヨは少し変な気もします。元気出してってことなら『元気出し?』って言ってます」
「愛の告白はどうやってするんだ?」







没理由:だってこんなん書きよったら全然話終わらんっちゃもん
















・NGその5.『34.前からもふらっと現れて』より

(似たような豪炎寺さんと鬼道さんの会話が35-1後半にある)




 電話をしても繋がらない。
コール音さえ鳴らない。
以前はこの時間なら連絡が取れたのだが、知らない間に生活サイクルが変わってしまったのだろうか。
豪炎寺はへの電話を諦めると、木の根元に座り小さく息を吐いた。
染岡の見舞いに行ったが、彼の口からは主に吹雪の話しか聞けなかった。
ボールを怖がっている氷のストライカー吹雪士郎。
円堂たちの話によると、彼は心の中にもう1つの人格を持つ多重人格者らしい。
世の中には完全無欠な人物などいないのに完璧にこだわるとは、なかなか難しい少年である。
必要とされるには完璧でなければならないと思っているらしい。
そんなはずはないと思う。
完璧だと思っている奴はろくな人間ではないと思う。
ただ、そう言っても今の吹雪には効果がないかもしれない。
だから悩んでいるのだ。
不必要に干渉し、再び吹雪を混乱させたくないために。

 それにしても、が染岡とまで仲良くしているとは思わなかった。
半田ならまだわかるが、染岡までとは。
人の好き嫌いが激しいにしてはよくできた行動だといえる。
怪我人の扱い方なんて知らないのことだから、どうせまた余計な事ばかり言って困らせているのだろうが。
ついさっきまで来ていたと染岡に教えられ慌てて周囲を探したが、見つからなかった。
あちらこちら動き回っているようなので、もしかしたら今日はもう眠っているのかもしれない。
元々体力はそれほどないならありえる話だった。
体を鍛えていないから、少しの行動ですぐに電車内だろうとどこだろうと寝こけるのだし。
1人でいる時も眠っているのではないかと、不安になることしばしばだ。





「豪炎寺、まだ眠らないのか」
「ああ。少し考え事をしていた」
「・・・繋がらなかっただろう?」
「俺がいつもにかけているという先入観を持つのはやめてくれないか、鬼道」
「だがそうなんだろう」




 言い当てられるのは少し気に喰わないが、事実なので何も言い返せない。
鬼道は豪炎寺の隣に腰を下ろすと、急に遠くに行ったなと呟いた。




「同じ稲妻町にいるのに、以前よりも遠くにがいる気がする」
「俺とはいつも遠いんだが」
「・・・実はお前が奈良で別れたことも、帰って来たことも伝えていないんだ。すまない」
を心配させたくなかったんだろう。気にするな、あいつもそれほど気にしていないはずだ」
「そうだといいんだが・・・」
「それに、俺が帰って来たことは知っているはずだ。ダイヤモンドダストの戦いの前にアフロディが一緒にいたらしいからな」
「何だと・・・? またアフロディがに何かしたのか!?」







没理由:たぶん吹雪くんの件が鬱陶しかったんだと思う
















・NGその6.『37.河川敷でエンカウント』より

(鉄橋と場所と時間を変えただけ)




 電気を点けることなく薄暗い部屋のベッドへダイブし、仰向けになると真っ白な天井を見つめる。
半田の分際で手厳しい言葉を吐き散らしやがって、張り手を飛ばさなかったことが不思議なくらいだ。
この間は急に性格イケメンになってドキドキしてしまったが、あんなことを言うようになるのならば当時のドキドキを返せと言ってやりたい。




「半田のばーか・・・」



 いっそ親友やめてやろうかと呟き、は顔をくしゃりと歪めた。
もう友だちを失うのは嫌だった。
友達は増やすもので、減らすものではない。
友だちがいなくなるのは彼だけで充分だ。
手紙で連絡を取り合うといったことすら思いつかず別れてしまい、以来音信不通のあの人だけで充分だ。
ちゃんまた絶対ぼくたち会えるよねと最後の最後まで約束を交し合っても結局何の音沙汰もない、自然消滅していった大切な人。







没理由:あれ、そういや22話じゃ明らかに布団を並べて寝てる描写してたよね
















・NGその7.『37.河川敷でエンカウント』より

(鬼道さん告白シーン)




 恥ずかしいがもう一度、後悔をしないためにも好きだと伝える。
の顔から笑みが消え、困惑顔に変わる。
ああ、これは伝わりはしたがにとってはあまりにも唐突すぎて思考が追いついていないんだな。
鬼道は根気良くの次のリアクションを待った。
とりあえず何か言ってほしい。
無言のままが一番不安だ。
の口がわずかに動いたのを見逃さず、鬼道は素早くに顔を寄せた。
嘘と呟く声が聞こえたので、嘘じゃないと諭す。
ここまで言ったのだ、嘘にされてたまるものか。




「鬼道くんが好きな人って、可愛くて明るくてサッカーに詳しい子じゃなかったっけ・・・?」
「だからそれがなんだ。ずっと前から、学生証を拾ってくれた時からずっとを見ていた、好きだった」
「違う違う、そうじゃないでしょ鬼道くん。だって鬼道くん、ろくでもない人じゃないから私のこと好きになるわけないじゃん」
「何だそれは」
「だって昔、修也が私のこと好きになる奴はみんなろくでもない奴だって」
、それは豪炎寺の妄言だ。まあ・・・、恋に現を抜かす男をろくでもないと評するなら、俺もろくでもない男になるんだろうが」
「そんなことないよ、鬼道くんすっごく優しくてかっこよくて紳士的! 自虐ギャグ駄目だってば!」
「・・・そうまで高評価をしてくれるのに、俺じゃいけないのか・・・」
「いやいや、そういうわけじゃないんだけどわあどうしよう鬼道くんそんな顔しないで、ね!?」







没理由:もう少し鬼道さんをいっぱいいっぱいにさせたかった
















・NGその8.IFから始まるエキシビジョン(別窓表示)

(もしものお話)

没理由:これ自体がNG






闇堕ちは読むのも見るのも好きだけど、求められるとは思ってなくてまさかのNG書き下ろした




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