54,5.とある半田の辛口評価










 人間、人生に3度はモテ期が到来するものらしい。
14年間生きてきて生憎とまだ一度もモテ期に出くわしたことはないのだが、ファーストモテ期はいつ来るのだろうか。
仮に来たとして、のようにてんやわんやの大騒ぎになるのだろうか。
半田は、を取り巻く盲目連中を思い浮かべため息をついた。
どいつもこいつも一筋縄ではいかない厄介者ばかりだ。
ろくでもない男にばかり好かれるという在りし日の豪炎寺の予言は見事に的中していたわけである。
豪炎寺が『ろくでもない男』の筆頭にいるとは、彼も思いもしていないだろうが。





「それで、なんで俺がこんなことしなきゃいけないわけ? の彼氏なんだから自分で決めろよ」
「決めてもいいけど、こういうのは異性の意見も聞いた方がいいかなって思って」
「へえ、一応俺のこと男だとは認識してたわけか」
「当ったり前でしょ。そりゃ半田はちょっとひょろっこいけど女の子には見えませーん」
「成長期舐めんなよ、すぐにと軽く10センチは差つけてやるから」
「おっきい半田とかイメージできなーい」
「でかくなったらをぜってー見下ろす。身長合わせたりしてやんねぇ」
「ひどっ! じゃあ半田が私見下さないように私ハイヒール履く!」




 ピンヒールの靴は足痛くするからやめとけ。
なんで半田がそんなこと知ってんの。
話が大いに脱線していると半田とが気付いたのは、言い合いを始めて優に30分経過した後だった。




























・豪炎寺修也
 雷門中が誇る、中学サッカー界を代表する天才エースストライカーにしての幼なじみ。
他を寄せ付けない圧倒的なキャリアと汎用性の高さを見せつけ、序盤はを独占する。
しかし、相次ぐ戦いに際してメンタルの弱さを露呈し続けた結果、取り返しがつかない大惨事を引き起こす。
宇宙人討伐後は多少打たれ強くなったかと思いきや相変わらず本番に弱く、常にとすれ違っている。





「俺、豪炎寺のこと応援してるよ、今でも一応」
「ふぅん?」
「応援してるけど、俺は豪炎寺の恋路よりもの方が大事だから厳しいこと言ってんのかなー」
「修也、半田にはマジで頭上がんない的な事ぼやいてたけど、ほんとに何言ったの?」
「内緒」












・鬼道有人
 名字すらろくに理解されていなかった天才ゲームメーカー。
策士らしく春奈と手を結びあれやこれやと策を弄してはいるが、特段高度なテクニックを要するわけでもないのにことごとく失敗している恋愛音痴。
には常に『優しい』や『紳士的』といった好意的な評価を受けているが、良くも悪くもその評価で留まっている。
初めの頃はのハグに免疫がなくすぐに呼吸を止めていたが、最近では自ら抱き寄せるなど手だけは早くなった。





「鬼道くんの印象が修也よりも酷く見えるのって気のせい?」
「それがの本音だ。どうだ、豪炎寺の方がましに見えるだろ?」
「はっ、まさか半田、中立に立ってるふりして修也の回し者?」
「だから俺言ったじゃん、これでも一応豪炎寺派だって。鬼道いい奴だよ、たぶん豪炎寺よりもいい奴だよ。でも、いい奴ってだけなんだよなあ」
「もう一押し欲しいよね! 私常々思うんだけど、鬼道くん超積極的になって迫ってきたら私駄目になる気がするの」
「だよなあ、やっぱ鬼道もたまには紳士面捨てるべきだよ」












・吹雪士郎
 自分がモテるということをわかっている上で行動する確信犯。
ちょっと可愛い子を見かけるとナンパ、とにかくナンパ。
爽やかな笑みを浮かべての短パンの中を覗いてみたり、ハグに見せかけあちこちまさぐってみたりと、かなりえげつない事をやってのけている。
すぐに『やだよおぉぉぉぉ!』とごねてはに叱られているが、いつも懲りていない。





「付き合う友人はよーく考えた方がいいと思う」
「私がイケメンに甘いってことわかっててあれこれしてくるんだもん。吹雪くんマジ困る」
「いや、はイケメンの豪炎寺には超厳しいから吹雪にもできるだろ。セクハラされてんぞ」
「でも吹雪くんこないだ怪我して日本にお留守番になったから、ちょっぴり寂しくなるけど私的には安泰安泰」












・久遠冬花
 を執拗につけ狙うストーカー。
女子中学生でなければとっくに御用になっているくらいに深刻なレベルのストーカー。
を誰よりも何よりも愛しており、夢はオランダでチューリップに囲まれた幸せラブライフを送ることと豪語して憚らない。
最近になってようやく春奈が事態の重大さに気付いたようだが、冬花の『ちゃん強奪大作戦☆』は、彼女がを初めて視界に入れたその日から既に始まっているのであった。





「この人・・・はあれか、俺と一緒に選抜戦観てた時に乱入してきたあの」
「そうそう。冬花ちゃんすごいよ、吹雪くんを女の子にした感じ」
「うわ、それある意味吹雪よりも面倒じゃん! もしかして久遠さんってよりも残念な美少女通称観賞用か!?」
「む、なぁんかその言い方すんなりうんって言えない! 半田、もしかして冬花ちゃんに鼻の下伸ばしてる!? 私がいるのに、ああ!?」












・不動明王
 を愛媛の真帝国学園に拉致しようと現れたはずがなぜだか理科を教える羽目になった、不憫体質の王様。
周囲に敵を作りやすく嫌われやすい性格で通っていたが、を前にするとそれら印象はあっけなく崩れ去る。
呼び名も『サン』から『ちゃん』へと変わり着実に親友ロードを歩んでいたと思われたが、孤高の反逆児らしく韓国戦を境にへの恋心を堂々と宣言した。
ただし、その宣言は当然のようにには伝わっていない。





「・・・そうか、そういうことか・・・・・・!」
「ヘ、何が?」
「いや、なんでもない。不動には任せてもいい」
「そうなの? 半田、修也派だったのにあっきーにも肩入れ? ていうかなんであっきー? んん?」
「肩入れとかそんなんじゃなくてなんつーか・・・。 とは違う意味で、人は見かけじゃないって教えてくれるよな」
「ちょっと半田、さっきから私にやったらめったら厳しくない? あんまり調子乗ってたらアイアンロッドだからね」












・風丸一郎太
 から絶大な信頼を寄せられている、雷門中及びイナズマジャパン随一の男前。
おはようのハグからおやすみのハグに至るまで、少なくとも一日3回は何かにつけてとハグなどのスキンシップを交わしている。
その位置は絶対的なもので、抜け駆け禁止協定を初めとしたに関するありとあらゆる約定の拘束を受けないという治外法権ぶりを見せつけている。
とハグをするたびに現れる花畑は、回数を重ねるごとに豪華かつ華麗に進化を遂げている。





「ま、言わずもがなだな。いつから風丸に目つけてたんだよ」
「こっち転校してきて、いい加減半田の顔見飽きたから運動場眺めてた時期あったんだけど、その時に青い髪したイケメンそうな陸上部員がいてビビッときた」
「それどう考えても風丸だろ。どこまでイケメンセンサー反応してんだ。あと俺に謝れ!」
「いやあ、風丸くんいなかったら私ここまで雷門中サッカー部にお邪魔してなかった。良かったじゃん半田、風丸くんのついでに私に良くしてもらって」
「良くしてもらった覚え一度もないんだけど!?」












・半田真一
 どこが気に入られたのかわからないままにの玩具に任命され、以来振り回され続けているクラスメイトの友人。
ぽろりと零した本音でを泣かせた頃もあったが、時が経つにつれ友人ランクは上昇。
をキチガイから守ったり、キチガイよりも頭がいかれていた当時の豪炎寺から庇ったりと半田にあるまじき獅子奮迅の活躍をした結果、めでたく親友へ永久就職を果たす。
の去就について知るただ1人の人物として、風丸とは違う意味での信頼を得ている。





「なあ、俺がどうしてここにいる?」
「仲間外れにしたらかわいそうかなって思って入れてみた、なんとなく」
「なんとなく!? 俺のこといいだろ、ほっとけ!」
「やぁよ。合ってんじゃん、私のおもちゃってあたりとか超ビンゴ」
「そこ!? ほんと謝れ、いっぺんマジで心を込めて俺に謝れ!」
「土下座ごめんなさいの対象は後にも先にも鬼道くんオンリーワンだもーん」






 土下座までしなくていいからきちんと頭下げて謝れ!
ごめんなさいの安売りはしてませんんー!
きゃあきゃあと騒ぎ逃げ出したを追いかける半田の制服のポケットから、ひらりと一枚の紙が舞い落ちた。






・好感度ランキング
1.豪炎寺
2.鬼道、不動
3.吹雪、久遠さん

別枠:風丸、俺(もここがいい)






あくまでも、半田の意見です




目次に戻る