そろそろ気づきましょう







 もう何百回目、いや何千回目かな?
とにかく何回目かは忘れちゃったけど、今日という人は年に一度しかやってこない。
誕生日を祝うような歳ではないと言われても、何度だって祝ってあげる。
だって日本さんは私を創り出してくれた、いわば生みの親のようなもんだし。
そう言ったらものすごい勢いで怒られたんだけどね。




「今日は奮発して、日本さんの好物ばっかり作ってみましたー!! というか、毎日日本さんの希望に沿ったご飯作ってるんですけどね」
「あぁ、だから今朝は何かと仕込んでいたのですか。ありがとうございます、
「そんな気にしないで下さい。イタリアとかも呼んで盛大に祝った方が良かったのかな」
「いいえ、大げさにしていただかなくて結構です。今は不景気ですし、皆さんあまり体調も良くないでしょう」





 美味しいですと言って皿に箸を伸ばす日本さんを見てると嬉しくなる。
私も日本さんもわぁわぁ騒ぐような性格でも年頃じゃないからクラッカーなんて鳴らさないけど、こうやって2人でゆったりするのもいいかもしれない。
なんだか鎖国やってた時代に戻ったみたい。
あの頃は毎日ずっと変わらなくて、すっごく退屈してたけど。





「そうだ! 日本さん日本さん、何か欲しい物とかありますか? ほら、誕生日プレゼント!」




 誕生日と言えばプレゼント。
ご馳走を作ったことに満足してすっかり忘れてた。
というか、最近はあげた記憶がない。
きっとずっと忘れてたんだろう。
若いふりはしていてもボケが始まったのだろうか。なんだか悲しい。




「そうですね・・・。では、来週発売されるゲームなどどうでしょう」
「うわーオタクな日本さんらしいなぁ。どんなゲーム? 私も遊べます?」




 こう見えてもゲームも得意だったりする。
やたらとかっこいいお兄さんたちが武器を振り回して敵を倒していくようなアクションゲームとか大好きだ。
特定のキャラばっかり育ててたら、日本さんにそういう人が好みなんですかってからかわれたけど。
でも、日本さんだって人の事言えないじゃない。
買ったギャルゲーで真っ先に攻略するのは、爽やかに可愛くて元気良くて、主人公にだけ砕けた敬語とさん付けしてくる人だって知ってるんだから。
でもそういう子って博愛主義だったりするから、攻略するのが難しいんだと思う。
プレイした後日本さん、いつも私のこと恨めしげに見てるもん。
私に八つ当たりされても困りますって感じなのに。




も一度やってみたらどうですか、ツンデレとか攻略しやすいんですよ、案外」
「げ、まーたギャルゲー買うんですか!? どうせまた日本さん好みの女の子が出るんでしょ、そうなんですね!?」
「違いますよ、今度発売されるのはヒロインを自由にカスタマイズできるんです。その気になればそっくりの子も作れるんですよ」
「そんなの私プレゼントしません! もっと別の、CERO規定が低いやつにして下さいよ!」




 プレイするなとは言えない。
たまに発売されるそういうゲームが日本さんの癒しのようなものになってるんだろうし。
でも、それを買いには、ましてやラッピングを頼んだりはできない。
そもそもそういうゲームは女の子に買いに行かせるべきではないのだ。
うん、これは日本さんの新手の苛めだ。
まるで本気出したドイツから、ドSの真髄を学んだかのような鬼畜っぷり。







「他のプレゼントですか・・・。・・・では、久々に背中でも流してもらいましょうか」
「え、そんなことでいいんですか? ていうか私でいいんですか?」
「他に誰がいるんですか」




 どうしてそこで怒ったようになっちゃうんだろう。
あんまり意外なプレゼントで、ちょっと拍子抜けしただけだってのに。
日本さんの背中を流すなんて、さっきまでの妖しいギャルゲー購入に比べたら全然楽だ。
昔から割と日本さんと一緒にお風呂入ってたりしてたし。
ほんとにそんなお願いでいいんだろうか。
もしかして日本さん、私の実力を過小評価してる?
それはそれで嫌だ。よし、こうなったら日本さんを見返すためにも、全力をもって背中を流さねば。




「もう、私以外に背中を流されるのが嫌になるくらい上手にやっちゃいますからね」
「何ですか、そのテンションの上がり方は。というか、あなた以外に一体誰に背中を預けるというんですか・・・」
「あ、またそうやって私を恨めしげな目で見てる! やっぱりこないだやってたギャルゲーで、意中の女の子攻略できなかったんですね!」
「・・・本当に、一体どうやったら攻略できるんでしょうね・・・。親密度は充分高いんですが全く私の想いに気付いてくれず、恋愛においてだけはどこかの国を真似したかのようにKYで・・・」





 わぁ・・・、ギャルゲーに関しては百戦錬磨の日本さんが悩んでる。
これはこれですごく新鮮に感じる。
今やってるゲーム、そんなに難しいのかな。
でも、たかが二次元の恋でこれだけ悩んでるんだから、現実世界で恋したらきっと日本さんの心臓耐えられないだろうなー。
いつか好きな子の前で八つ橋ぶち破って、恥も外聞もなく大告白しそうだ。
私、その時日本さんの力になれるかな。
日本さんってすごくいい人なんだよって援護したりして、精一杯頑張ろう。




「うーん、きっとその子、日本さんっていうか主人公のこと良いお友だちとかそこらへんの感覚でお付き合いしてるんですよ。
 だから『好きです』じゃなくて誤解招かないようにびしっと『あなたを愛してます』って言わなくちゃ」
「・・・とても参考になりました。・・・さて、そろそろ湯殿にでも行きましょうか、
「日本さんをすっごくいい気持ちにさせますね!」





 その後お風呂で日本さんの背中を流してあげてた私は、いきなりこっち向いてきた日本さんから、
八つ橋ぶち破って恥も外聞も捨てた大告白を聞かされたのだった。









告白の言葉は『あなたを愛しています』だよ!




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