喧嘩する相手さえもいないの?







 ○月×日。今日も俺様が超かっこよかった。あと、に会った。
黙っとけば充分美人なのに相変わらずイライラさせた。






















 ○月×日―――――。今日も今日とてのんびりまったり畑仕事でもしてようかなとコタツから出ようとした時のことだった。
日本さんが世界会議について来いと言ったのは。





「えー、私そんなの行っても暇じゃないですかー。1人で行ってくださいよ1人で」
「今は節約すべき時代なんです。とっておきの大根準備したんで、神通力使って向こうまで連れてって下さい」
「上司連中と一緒に行けばいいじゃないですか。瞬間移動って結構疲れるんですよ? 女の子には優しくして下さいよ」





 私1人が移動するのは気楽だし簡単だけど、人を連れてとなると非常に疲れる。
でも日本さんは初めから私を利用しようと思ってたらしくて、今更飛行機に乗ったら遅刻ですとかほざいてきた。
遅刻なんてやっちゃいけないし、ドイツとかに叱られる。
余所ではいつも真面目に頑張ってる日本さんを知ってるだけに、叱責なんてされてほしくない。
・・・となると方法は1つだ。大人しく日本さんを向こうに連れてく。
なぁんだ、最初から拒否権なんてなかったんじゃないの。





「仕方ないですねー・・・。いい加減神様離れして下さいよ、もう」
「はいはい。では、さくっと速やかにお願いしますね」
「それが人にもの頼む時の態度・・・?」





 なんだかんだで結局日本さんに逆らえない私は、ばっちり日本さんを会場まで送り届けた。
途中で力が足りなくなっちゃって無理した挙句、着いた先で倒れちゃったんだけど。




























 やっぱり、大の男1人連れてくのに大根1本じゃ足りなかったんだ。
そりゃそうだ。日本さんが大根と同じとは思えない。
せめてカボチャを加えておくべきだった。いや、ジャガイモ3個でも良かったかもしれない。
そんなこと悶々と考えてたら、いつの間にか目が覚めていた。
こっちに着いたなりバターンで日本さんたち慌ててたみたいだけど、それからはよく覚えてない。
でもみんな今頃は会議やってんだろう。
この部屋、鼻歌以外に何も聞こえない。・・・え、鼻歌? なんで。






「お、目が覚めたか」
「・・・誰?」




 ベッドに腰掛けて顔覗き込んできた相手の顔見て、思わず呟いた。
誰とか聞いたもんだから、ショックからか怒りからかちょっと震えてる。





「てめぇ・・・、ここまで運んでやった騎士様に『誰?』はねぇだろうが」
「は!? プロイセンがここまで運んだの? なんで? ドイツみたいにムキムキじゃないのに?」
「ヴェストほどはないけど日本よりかは充分あるって! てかちゃんと知ってんじゃねぇか俺のこと!」
「あ、日本さんの悪口言ったでしょ今。そんな事言ったら許さないわよ、ジャガイモ不作にしてやるんだから」






 なんだかなぁ・・・。寝てる人に向かって脅しかけたり大声出したりするのやめてくれないかなぁ。
いくら友達いなくて絡んでくれる人がいないからって、私に振られても困るものは困る。





「ねぇ、なんでプロイセンがここに来てんの? 今日はお呼びじゃないでしょ、世界会議なんだから」
「ヴェストが心配だったから一緒に来てやったんだよ!」
「ドイツはきっと、プロイセンのこと心配してるよ。いつまでも弟離れできない兄でどうしようって」
「う、うるせーよ! お前だっていつも日本とぴったりで、いい加減離れろ!」





 日本さんと一緒にいて何が悪いんだ。だって私は日本さんちの神様だもん。
国外にいる時は、日本さんの近くにいるのが一番調子いいんだ。
まぁ他にも近くに美味しい野菜あれば元気になるけど。





「別にいつも日本さんと一緒じゃないもんね。イタリア兄弟とかスペインとか、オーストリアのとこにもよく行くもん。プロイセンがそこにいないだけでしょ? いっつも1人だもんね」
「・・・ほんとにいちいち気に障る言い方しやがって・・・!」
「だってほんとのことでしょ。まぁでも今日は、プロイセンが1人きりで暇を持て余してたから介抱してくれたんだろうけど」





 そういえばまだお礼言ってなかった。
どうもありがとうっていうと急にプロイセンがにやって笑った。
こんな性悪そうな笑みを、果たして騎士とやらが浮かべるのだろうか。
調子に乗ったプロイセンほど扱いに困るというかウザイ者もないので、さっさと退散しようと体を起こす。





「ということで、私散歩してくるわ。ついでに何か食べたいし」
「おっとそうはさせないぜ」
「じゃあプロイセンが何か食べ物持ってきてくれる? ジャガイモの煮っ転がしでもいいから」
「そんなもんねぇよ!」





 あぁそっか。煮っ転がしなんて日本でしか食べないから、いくらプロイセンがジャガイモ好きでも用意できないのか。
仕方ない、マッシュポテトで我慢しよう。
要は美味しければなんだっていいんだし。
そう思ってベッドから出ようとすると、今度はがしっと肩を掴まれて押し倒された。
・・・ほーんと、プロイセンが何をしたいのか私にはわからない。





「・・・何やってんの? いくら遊んでもらえる相手がいないからって、私に絡まないでよ」
「助けたんだからそれに礼はもらわないと割に合わないだろ? 頼み事するんならそのお礼の分ももらわねぇと」
「あのねぇ、騎士はか弱い女の子に見返りなんて求めないんだけど。ドイツが聞いたら悲しむよ」
「ヴェストにゃ聞かせねぇよ」





 あぁもう鬱陶しい。早くこの部屋から出て行け。
プロイセン、一体いつまで女の子の部屋に居座ってるつもりなんだ。
ここにフライパンあったら即行でぶちのめしてるのに。
どうだ降参しろはははははと笑ってるプロイセンにほとほと呆れて黙ってると、プロイセンも笑うのやめた。
もう相手にするもんか。私だって暇じゃないんだ。
帰りのために体力蓄えとかなきゃいけないんだ。






「どうしたんだよいきなり黙りこくって。さては俺に恐れをなしたな?」
「・・・・・・。(勝手に言ってろ)」
「こうやって大人しくしときゃ充分いい女なのにな。お前人生の半分損してるぞ」
「・・・・・・。(プロイセンにだけは言われたくない)」
「なぁ、俺にしとけって。毎日ジャガイモ食い放題だぜ!」
「・・・・・・。(絶対やだって言うか、ジャガイモぐらいどこでだって食べれるし)」






 プロイセン、1人でずっと喋ってるけど空しくないんだろうか。
よっぽど人と絡めるのが嬉しいんだろう。
私は全然楽しくないけど。
いい女ってのも他の人に言われたらきっとそれなりに嬉しいんだろうけど、全く対象外の人に言われても何とも思わない。
しかも最後の言葉の意味がますますわからない。
何が悲しくてプロイセンと付き合わねばならないのだ。








「ま、とりあえず既成事実作っとくか」
「は!?」





 思わず声を上げてしまった。
いやちょっと待って、いくらなんでもそれは黙っちゃいられない。
私は武器はないかと部屋を見回した。
残念、野菜も果物もない。
乙女の底力でプロイセンの腕振り払って窓の外を見る。
あ、会議が終わったらしい日本さんが野菜がいっぱい詰まった籠抱えてこっち来てる。
日本さん、ちゃんと罪悪感感じてくれてたんだ。
・・・・・・とかなんとか感傷に浸ってる場合ではないので、急いで日本さんの籠の中に野菜に向かって念じる。
何でもいい、今すぐプロイセンの馬鹿がやろうとしてる暴挙を止めてくれ。
離せ離すもんか、ドイツに言い付けるよ言えるもんなら言ってみろ、ジャガイモ滅ぼすよ犯すぞ!
ベッドの上で攻防戦やってたら、がしゃんとガラスが割れる音がした。
次いでどごおっと鈍い音がしてプロイセンがゆらりと床に倒れ伏す。
床には硬そうなカボチャが転がってる。







、大丈夫ですか!」




 自分が持ってた籠の異変に気付いてくれた日本さんが、ばたぁんと大きな音立てて駆け込んできた。
手には抜き身の日本刀。なんて恐ろしい出で立ちなんだ。
でも、とっても頼りになる。





「何があったんで・・・・・。・・・プロイセンさん?」
「日本さん、それが・・・。プロイセンがいきなり襲ってきて、びっくりして返り討ちにしちゃった」
「・・・そうですか。とにかく、無事で何よりでした。プロイセンさんは、後でドイツさんからみっちり叱られてもらいましょう」
「ぜひともそうして下さい。日本さん、私お腹空いちゃいました」
「はいはい。では食堂に行きましょうか」





 それから私は食堂でみんなとわいわいやったからプロイセンのことはすっかり忘れた。
でも後でドイツから聞いたところによると、カボチャをぶつけられても気絶しないように鍛え始めたらしい。
鍛えたところで喧嘩にかまってもらえる相手もいないってのに。










なんだかんだでプロイセンの片想いだといい




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