おなまえよんで







 日本と一緒に住んでる(同棲とは認めないよあくまでも同居だよ!)ちゃんは、とっても可愛い女の子だ。
ちょっと変わった子だけど人懐っこくて、俺はそんなちゃんが大好きだ。
ちゃんを好きな人は他にもいっぱいいるだろうけど、俺がちゃんのこと一番大好きだって思ってる。
ちゃんだって、他の誰よりも俺のことが大好きに決まってる。
だって俺とちゃん、ラブラブだもん!

 今日はちゃんと俺の家でデートなんだ。
昔っからいろんな女の子ナンパしてそれなりにデートとかもしてきたけど、ちゃんと会う時はいつもドキドキする。
ドキドキしすぎて珍しくよく眠れないなぁって思ってちょっと夜更かししたら、だいぶ寝坊した。
待ち合わせの時間までそんなに余裕はない。
ちゃんが遅刻することは滅多にないから、俺のせいで長く待たせたら大変だ。
ちゃんすごく可愛いから、うっかり他の人にナンパされそうだし。
ジャポネーゼの女の子ってはっきりノーって言えないから、ついついぐいぐいナンパしちゃうんだよね。
困ってるちゃんも可愛いけど、他の人の手にかかって可愛くなるのはやだもんなぁ。
そう思って、俺は急いでちゃんとの待ち合わせ場所に向かった。



















 ちゃんとの待ち合わせ場所にしたのは、俺の家でも割と有名な恋人たちが落ち合う場所。
お家まで直接行こうかってちゃんは言ってくれたけど、やっぱりデートなら待ち合わせとかもそれらしくしたいでしょ?
だからわざわざこっちを待ち合わせ場所にした。
それにちゃんみたいに可愛い女の子の彼氏が俺だって、みんなに自慢できるでしょ。
ちゃん、今日はデートだからいつもよりももっと可愛いかもしれない。
どこにいるんだろうちゃん。
あちこちきょろきょろして黒髪の女の子探してたら、時計台下のベンチで見つけた。
でも、隣には知らない誰かが座ってる。
あぁ、きっとあいつちゃんをナンパしてるんだ。
男の気持ちはよくわかる。
俺だって初めて日本に行ってお茶とお菓子運んできてくれたちゃん見て、即行でナンパしたもん。
お人形さんみたいですごく可愛いねデートしようよって言った時のちゃんのはにかみ笑い、今でもしっかり覚えてる。
・・・その後日本にきつーく釘刺されてお灸据えられて、ドイツに怒られたのも覚えてるけど。
きっと今、ちゃんの隣にいる男も俺と同じ気持ちなんだ。
でも残念だったね、その子はもう俺のものだよ?






「時間になっても来ない男なんて放って俺と一緒に遊ぼうよ」
「でも・・・、少し遅れてるだけだろうし、そもそも知らない人と遊ぶ趣味なんて私持ってないし・・・」
「こんな可愛い女の子待たせてるなんてロクな男じゃないよ。それに今日あって話した瞬間から、俺と君は友人さ!」
「や・・・、友だち作るのってもうちょっと手順とかある気が・・・」
ちゃん、お待たせー!!」





 言い寄られて手を握られて困ってるちゃんに声をかける。
あ、俺を見たちゃんがほっとした顔してる。
イタリアって言いかけて、でも近くに人間がいるって気付いてフェリシアーノって呼んでくれる。
あぁもう可愛いなぁちゃん。
今度からずっと名前で呼んでもらおっかな。
そしたら兄ちゃんや日本や、他の国のみんなに俺とちゃんの仲を見せつけられるでしょ?
俺はちゃんをナンパしてた男をちらっと見て、ちゃんに尋ねた。





「この人、お友だち?」
「向こうはそのつもりみたいだけど、私にとっては知らない人なんだよね・・・」
「そっかー、それナンパだよちゃん。・・・お兄さんも俺のお姫様に手を出さないでくれる?」
「可愛い恋人待たせるなんてイタリア男の風上にも置けねーな」
「やだなぁ、お兄さんみたいなナンパしてる人から守ってあげた方が女の子はときめくんだよ。そんなこと知らないでイタリア男名乗ってもらったら俺、悲しいよ」





 俺とナンパ男の会話聞きながら、ちゃんは首を傾げてる。
神様としての力だかなんでだか知らないけど、ちゃんは俺たちそれぞれの国の言葉も理解できる。
でも、あんまり早口だったり難しい言葉だったりしたら伝わりにくいみたい。
今は絶対にちゃんには聞かせたくないって思ってるからわかんないんだね、きっと。
こんなこと、恋敵にしか言えないよ。





ちゃん、待たせちゃってごめんね。今日は美味しいパスタ食べに行こうよ!」
「そうだね。・・・ありがとう、タイミング良く迎えに来てくれて」
「いいよいいよ、愛するちゃんのためだったら、俺何だって頑張るよ! それよりも今日も最高に可愛いね、ちゃん!」
「イタリアも今日はかっこよかったよ」





 ・・・今日『は』ってことは、いつもはかっこ悪いのかな。
なんだか意味深なこと言われた気もするけど、あんまり深く考えるのはやめとこう。
今日かっこよかったならそれで俺は満足だ。
それにかっこ悪い俺も知ってるけど、それでもちゃんは俺を愛してるってことだもんね!
俺、たくさん愛してもらって嬉しいよ。





「あ、ちゃんちゃん。今度から、いつでもどこでも俺のこと名前で呼んでくれない?」
「えー・・・、舌噛みそうだからやだなー・・・」
「舌噛んじゃったらその度に俺が消毒してあげるよ!」
「・・・・・・消毒はいらないよ、フェリシアーノ」
「うわー! ほんとに呼んでくれたー!! 嬉しいからキスしちゃおー!!」
「え」





 ちょっと変わってるけど、とびきり可愛い俺のちゃん。
元々たくさんキスしてるけど、名前呼んでもらったらもっとキスする機会が増えそうな気がした。









後日、みんなの前で名前呼ばれた時の優越感といったら!




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