イギリスの場合





 ツンデレは年中無休らしい。
つまりイギリスは1年間365日、素直になったことがない。
イギリスがツンデレになろうがヤンデレになろうが、私に被害が及ばなければ正直どうだっていい。
逆に言ってしまえば、私に関わることならば彼のツンデレ状態は、非常に面倒だった。




「・・・だから、イギリスはクリスマスどうしたいわけ。はっきり言ってよ、時間の無駄なの!」
「む、無駄って言わなくてもいいだろうが! 招待してやってもいいつってんだから大人しく受けろ!」




 華やかなクリスマスを味合わせてやる、別にお前と一緒に過ごしたいわけじゃないんだからな、たまたま俺の隣が空いてただけなんだからな。
そう顔を真っ赤にして渡された招待状は、たまたま隣が空いたから急遽用意したとはとても信じられないくらいに凝ったものだった。
随分と前から準備し、私に渡そうとしていたのだろう。
真っ白な封筒の隅にうっすらと手汗が滲んだ跡が見えるが、全く微笑ましくない。
誘いたいんならもっと男らしく、ずばっと誘ってみせろ。
そう叱り付けたかった。




「大体今日がクリスマスだし」
「・・・・・・ついさっき招待状渡したけど、そうでなくてもここに来たのか・・・?」
「・・・・・・」
「な、何だよ。強がってても結局お前も俺と一緒にクリスマス過ごしたかったんだろ!? 可愛いとこあんじゃねぇか」
「あ、私、間違ってドーバー海峡渡ってきちゃったみたい」
「あいつだけには負けたくないんだよ、冗談でもそういう事言うのやめてくれ」




 扉へと体を向けた私をイギリスが必死に止め座らせる。
どうしてクリスマスに来ただなんて訊かれても、これでも一応イギリスの恋人だからですと答えるしかない。
彼の性格をわかっているからこそあえて来たのだ。
察しの良さを褒めてもらってもいいくらいである。
それをあのツンデレは、自分の甲斐性のなさを棚に上げてからかいにかかるとは。
イギリスはもう少し、私に優しくすべきだと思う。
いつまでもこんなだと、ほんとにドーバー海峡渡るのやめる日来るんだからね。





「・・・本当は最初から俺の隣はだって決めてたんだ。信じてくれ」
「他の女の子侍らせてたら私は何だったのって話だしね」
「あと、クリスマスプレゼントにをくれって言うつもりだった」
「今言ってるし、クリスマスじゃなくても割とイギリスに持ってかれてるけど」
「・・・・・・そうだったな」




 やっと素直になってきたイギリスを見つめて、小さくため息をつく。
こんな扱いにくい男と付き合ってあげられるのはきっと私くらいだ。
私も相当物好きだ、何が楽しくてツンデレ男と一緒にいるんだか時々わからなくなる。




「・・・これから残りのクリスマスの時間、俺と一緒に過ごしていただけますかお姫様」
「最初からそう言えば私も文句言わずOKしてたのに・・・」
「ほんと一言多いな! ・・・ま、そこも含めて惚れたんだけど」




 一言多いのはお互い様。
私はようやく差し出されたイギリスの手に、自分の手を重ねた。









『隣』=某芸人さんが言ってる『○○のここは空いていますよ』という意味で




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