夏のギフト募集中







 デパートから送られてきたお中元ギフトのカタログをぱらぱらと捲り、テーブルの上の煎餅に手を伸ばす。
紙が汚れるからやめなさいというお小言にはいはいと返すと、返事は1回ですとお小言がまた増える。
親でも先生でもないのに、相変わらず歳よりは口うるさくてやっていられない。
私はカタログを閉じると、お茶をずずっと飲み干して日本さんを見つめた。





「自分で選べない優柔不断な日本さんに代わって選んであげてたのに、どうして私が叱られなきゃいけないんですか」
「行儀に問題があるんです。いい歳した大人がみっともない」
「いいじゃないですか別に、ここ家ですし」
「日頃の行いは余所へ行ってもうっかり出てくるものなんです。、お煎餅がもう空です」
「自分で取りに行って下さいそのくらい」




 話をしている最中も食べる手だけは休めなかったおかげで、テーブルの上の煎餅はもう残っていない。
仕方がない、お茶のお代わりのついでに持ってきてあげるとするか。
私が台所へ向かったのを見届けた日本さんが、ちょっぴり醤油臭くなったカタログを手に取り捲り始めた。





「何かいいのはありましたか?」
「たくさんあって選べないんです」
「毎年同じこと言いますね、あなた。人のこと言えないじゃないですか」
「今年も上司連中に贈るんでしたっけ? 誰に贈ればいいのやら」
「・・・確かに、これは見極めが難しいですね・・・」
「最近は瞬きしてる間に日本さんの上司変わってるから、もう覚える気も失せました」





 3,4年くらい同じ上司だと何を贈ればいいのか好みもわかってくるけど、毎年上司が変わるようなこのご時世だともはやお知り合いになろうとも思わない。
元々私は土いじりが好きで土いじりしてる時以外は家にいる典型的な草食系女子だから、人との交友関係は広くない。
それをわかっている日本さんも私を外へ連れ出しはしないから尚更、日本さんの仕事相手とは縁もゆかりもない。
そんな赤の他人のために今もこうして贈り物について考えてあげているんだから、私も相当に優しいと思う。
これだけの時間があったらキュウリの出来を確認しに畑にいけるのに、人付き合って面倒で難しい。
私は日本さんの隣に腰を下ろすと、とある商品を指差した。





「私、もらうならこれがいいです」
宛てではなくて私宛てに届きますから、今年も我が国各地の干物で決まりです」
「塩分控えめにしないと高血圧になるってドイツに言われっ放しじゃないですか。たまには若者の意見も聞いてあげたらいいのに」
「ようやく自分が若作りしているだけのただのくそババアって気付いたんですか」
「日本さんも充分くそジジイです。いいなあ、欲しいなあ野菜ジュース」





 そうだ、今度大阪くんとかにさりげなく頼んでみたらどうでしょう。
あなた、とんだおねだり魔ですね。
私と日本さんは、人に贈るものを選ぶためのカタログに自分たちの欲しいものを蛍光ペンで囲み始めた。







干物と漬物で溢れかえるであろう




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