足は手口ほどに物を言う







 忙しいから相手ができないんだと言うなら、どうしてここに来るよう誘った。
相手ができないほどに忙しいのに、どうしてティータイムの準備をしている。
わかりやすく、そしてはた迷惑なツンデレだ、振り回され付き合わされるこちらのことも少しは考えていただきたい。
私は紅茶と一緒に出されたスコーンをそっと押し戻すと、向かいに座り忙しなく書類にサインしたかと思えば携帯電話で誰かと話し続けているイギリスを眺めた。
イギリスはいつも忙しそうだが、五輪が間近に迫っている最近はいつにも増して忙しそうだ。
この間は上司の誕生日を世界レベルで盛大に祝い、憎たらしくも可愛らしい弟の独立記念日という名の誕生日を祝い、イギリスがいつ眠っているのか少し心配になる。
寝不足のぼけた頭と味覚で用意された殺人ティータイムを過ごした直後に雲の上の実家に強制送還など笑えない。
素面でも何を考えているかわからないイギリスに、しかも彼のフィールドで介抱されるなど危険すぎる。





「私勝手にふらふらしてるから、忙しいならイギリスが相手してくれなくていいよ」
「客人を暇させるほど俺は落ちぶれたつもりはないんだが」
「もう暇してるから落ちぶれてるよ、何百年か前から落ち続けて今もうどん底じゃないかな」
「ったくも寂しがり屋だな・・・。ほら、何したい? 何してほしい、どこ行きたい?」
「ドーバー海峡渡って、今すぐお口の中リセットという名の美味しいもの巡りしたい」
「・・・喧嘩なら買うぜ」
「紳士にあるまじき悪ーい顔してるイギリスに、非力ですぐ死ぬ私が勝てるわけないでしょ。
 ほんと私脆いからね、ちょっと凶作になって土壌汚染されただけで良くて雲の上、悪くてしたことないけど消滅だから」
「ほんと、構ってほしいなら素直にそう言えよ。寂しすぎて死んじゃうってか?」




 駄目だ、この馬鹿忙しすぎて更に馬鹿になってる。
誰も寂しいなんて言ってないのに都合良く人の発言捻じ曲げて、何が楽しいのかにやにや笑って。
むっとしてテーブルクロスに覆われたテーブルの下でイギリスの向こう脛を蹴飛ばそうとすると、私の剥き出しの素足にぞわりとした感触が走る。
イギリス目、手癖と女癖と酒癖だけじゃなくて足癖も悪いなんて本当にどこが紳士だ。
イギリスの足攻撃からいったん撤退すべく足を引っ込めると、日本人よりも遥かに長い足を持ったあしながエセ紳士が逃げた足を追いかけ、膝上までそろりと靴を脱いだ足を這わせてくる。





「イギリス・・・」
「ん? 遊んでほしいんだろ?」
「お行儀、悪い・・・」
「知ったことか。それに先に仕掛けようとしたのはだろ。売られた喧嘩は買うぜ?」
「イギリスの喧嘩は、無抵抗な女の子の足這いずり回ってくすぐることなの?」
「くすぐったいのか? ここか?」
「わっ、ちょ」





 手と口は貸してやれねぇけど、足は空いてるから口と手が空くまでは足で相手してやるよ。
そう言って不敵に笑った直後、イギリスの後頭部にタマネギが直撃した。







片手間に相手されて満足するほど私は安い女じゃないの!




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