の家から連絡があった。
母は相当呆れ返っているらしい。














Step:××  お嬢様の基準
            ~おしとやかじゃないといけない訳?~















 「アスランっ!!お母様に何吹き込んだのよっ!?」









誰もがうらやむであろう容姿を持つものの、それも黙っていないがために惜しい事になっている美少女、
は偶然前方からやって来たアスランに食ってかかった。
彼女がアスランに向かって声を荒げる事は滅多にない。
そんな彼女が今日はものすごい勢いで、顔と顔とがぶつからんばかりに詰め寄っているのだった。






、俺は心配してるんだ。
 叔母上だってまさかをこんな娘に・・・。」
「私がどんな性格だろうといいでしょっ!?
 それに私だって・・・、ぃだっ!!」






あやすようにして諭すアスランになおも言い募ろうとしていたに不意の攻撃が加えられた。
別に銃か何かで撃たれたわけではない。
ただ、







「そんな所で突っ立っているな。
 それとも・・・、まさかまた迷ったのか?
 ふん。」



、おい、っ!?」







ドアの前で話していたとアスラン。
ドアを思い切り開けたのはイザーク。
が悲鳴を上げたのはドアが彼女に直撃したから。
そして今、はアスランにもたれかかったまま動かない。
ものすごい音をしてドアにぶつかった彼女はそのままずるずると床にへたり込みそうになる。
さすがに状況がおかしいと悟った2人は互いに顔を見合わせた。
そして、気絶したままのと急いで彼女の部屋へと運び込んだのであった。
















 年頃の少女の部屋に無断で、しかも年頃の少年達が4人も入るのはかなり問題である。
気絶、のニュースはすぐさまニコルとディアッカにも伝えられた。
そして彼らは今、ベッドに寝ているをいつ目を覚ますものか、とじっと待っているのである。








「ん・・・、んぁ・・・。」





妙に色っぽい声を出しながらは目を覚まし、身体を起こした。
そしてきょろきょろと辺りを見回すと不思議そうな顔をして小首をかしげた。
その動作のとてつもない可愛さにアスラン達は内心焦る。






、大丈夫?
 ものすごい音がしてドアにぶつかったけど・・・。」




いまだにぼうっとしているにアスランは優しく声をかけた。
相手が従妹だと人はこうも優しくなれるのであるか。
猫なで声と言っても特に差し支えはない。







「音・・・、うん、大丈夫・・・。
 心配してくれてありがとう、アスラン。」





はそう言うとふわりと彼に笑いかけた。
その微笑みには健康的な色気が多分に含まれており、思わずアスランを始めとする4人は柄にもなく顔を赤らめてしまう。









「ふん、たかがそれくらいで気絶するなどつまらん奴だ。」




イザークが照れ隠しなのかいつもよりもさらに強い口調でをなじった。
すると彼女は急にうつむき、ぎゅっと毛布を握り締めた。





「そう・・・だよね・・・。
 私こんなんじゃ・・・。
 私・・・、やっぱり軍人には向いてないのかな・・・?」




そう言ってぽろぽろと涙を流し始めるではないか。
これにはさすがのイザークも驚いた。
いや、驚く前に引いたかもしれない。
そして追い討ちをかけるようにしどろもどろになっている彼にその涙に濡れた顔を向けた。
潤んだ瞳にほんのりと上気したその顔は美しいを通り越して、危険極まりない色気を放っていて。
が、は色気に当てられて返答する余裕もないイザークを、てっきり黙っているのは肯定の意味だと受け取ったのだろうか。
寸分の隙も見せないおしとやかな動作で音も立てずにベッドから降りると、今度は荷造りをはじめるではないか。






!? ちょっと待て!
 早まるな!! つーかその性格はどうしたっ!?」





完全にペースを乱されたディアッカはの行動を止めようと必死になって彼女の腕を掴む。






「やだっ、離してっ、私は・・・っ!!」




無我夢中でディアッカを振り払おうとするは彼を引き剥がした拍子に壁に頭をぶつけてしまう。
再び彼女の頭と壁との間にものすごい音がした。










「きゃ・・・。」







先程ドアにぶつかった時とはまるで比べ物にならないほどに可憐な悲鳴を上げて、はふらふらと倒れかけた。
そんな彼女を慌てて支えたのは、一時的にの色気に当てられ戦線離脱していたイザーク。
が、この時彼がを掴んだ場所がまずかった。










「イザーク・・・、なんと言うか・・・、あなたの胸、掴んでますよ。」
「なにっ!? イザーク、お前俺の大事な従妹に・・・!!」
「俺だってたまにはそういう嬉しいハプニングとかしてみたいんだけど・・・。」







明らかに約一名言っている趣旨が違うが、とにかく仲間達に迫られ、一瞬何の事だかさっぱり分からないイザークは
そのまま彼女の胸を掴んだ状態でいた。
その時間約5秒。
突然彼の腹に激痛が走った。
そして腕の中からはニコル以上に真っ黒いオーラが。















「イザーク・・・、あんたどこ触って・・・。
 とっととその手を離しなさいっ、この変態っ!!」








声の主はもちろん
その顔には涙の跡もなく、最前まで見せていたあの色気たっぷりの雰囲気も皆無である。
さらに言葉遣いまでもが元に戻って・・・、いや、前よりも悪くなっている。






「なっ・・・、貴様ぁっ、さっきまでのあのしとやかさはどこへやったっ!?」
「しとやかさ? んなもん知らないわよっ!
 寝呆けてたんじゃないのっ!?」





どうやらは自分が気絶した後の事を綺麗さっぱりと忘れ果てているようだ。
状況が明らかに変わったアスラン達は忍び足で修羅場と貸した彼女の部屋から早々に逃げ去る。
これではさしものニコルの出番もなさそうだ。
イザークの断末魔の声との宇宙を揺るがす怒鳴り声が艦内中に響いたのはそれからすぐ後の事である。




























おまけ。



「くそっ! 何だって俺がこんな目に遭わねばならんっ!
 あいつごときに!!」



数時間後、イザークの美しい顔には右の頬にうっすらと紫色のあざの跡が見えた。
どうやらは手加減なしにイザークを叩きのめしたらしい。


「まあまあ、がそうするのも当然だし、それに今日のところは1人に制裁加えられたぐらいで良かったと思わないと。
 それよりもさ、どうだった? の感触。」

「知らんわぁっ、そんなものっ!!」



とかなんとか真っ赤な顔をして例のごとくディアッカに八つ当たりをするイザークであった。







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