4.アイツがいつも一枚上手



 元新聞部の情報探求力舐めんな。
耳寄りな情報があるのなら、たとえそこが上級生の教室だろうとペンと取材メモ帳を手に突撃するのだ。
春奈は昼休みになるとすぐさま教室を飛び出した。
廊下を大人しく歩いてなどいられない。
走ってほしくないのならば、超高速歩く歩道を設置するべきだ。
春奈は目的地である教室の扉を勢い良く開いた。
いた。
教室の隅の席4スペースで人目も憚らず互いの弁当をつつき合い味比べをしている、
10人が10人カップルだと思い込むただの幼なじみーズが。




「今日の卵焼きはおばさんが作ったのか。美味しい」

「私のが美味しくなくて悪かったですね」

「そんなことは言ってないだろう」

「なあ、いい加減やめろよその「さん!」おおお音無!?」




 兄の心臓に悪いだけの行為を途中中断させ、驚き飛び上がった半田が座っていた椅子を勝手に奪い取ると、
春奈は箸を握ったまま固まっているに詰め寄った。
さんと声をかけると、ようやく状況を理解したのかがああと呟いた。




「どうしたの春奈ちゃん。あ、おべんと食べる?」

「いえ、今日は結構です。さん、クリスマスの予定はありますか?」

「クリスマス・・・? あったっけ、何か」

「な「豪炎寺先輩は黙ってて下さい」・・・」

「あああったあった。映画をイブの日に観に行くよ、1人で」

「1人で映画!? な、何の映画ですか、どこで!?」

「駅前の映画館に、地球を滅ぼしに来た未来人と戦うSF映画観に行くんだ」




 主人公はそうでもないけど、主人公の脇固めてる2人がすごくかっこいいんだよと熱弁を奮うの言葉を、
春奈は逐一メモ帳に書き留めていく。
1人で行くならこれを逃す手はない。
偶然を装って兄とばったり会わせよう。
そうすれば、晴れてクリスマスデートになる。




「わかりました! あ、豪炎寺先輩」

「何だ?」

「イブの日、絶対にさんと会う約束しないで下さいね! 絶対ですよ!」

「あ、ああ・・・」




 めくるめくクリスマス映画デートを完璧にさせるまで、もう少し情報収集をしなければ。
まずは上映時間を調べ、の家から映画館までのルートを調べ、どこでばったり会うのが一番運命的かリサーチしなければ。
猛然と教室を飛び出していった春奈の背を、と豪炎寺は訳もわからず見送った。




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