お題・3
3.感じてわかりあえること



 四阿で仲睦まじく談笑している兄夫婦を眺める。
あの仏頂面の兄があそこまで相好を崩すとは、さすがは義姉上だ。
愛する男に心の底から愛されているとは、女としては羨ましい限りである。
わたくしもいずれはあのようになりたい。
ほわわんと想像していると、頬が熱を帯びてくる。
白昼から思い描くことではなかった。
わたくしとしたことが恥ずかしい。
首を左右に振り火照った頬を冷ましていると、ちょうど甄姫と目が合った。
艶やかな笑みでこちらに来るようにと手招きしている。
今あそこに行って、果たして邪魔にはならないだろうか。
兄へ視線を移すと、早く来いと目で促された。
兄はともかく、なぜ自分のようなおよそ姫君らしくない地味な娘が甄姫に好まれているのか、さっぱりわからない。
わからないが、可愛がられているのは嬉しかった。
彼女に付き合うことで少しでも女らしくなったら、きっと喜んでくれるはず。
凌統のことを思い出し、また頬に熱が集まってきた。




「最近、よく表情が変わって可愛らしいですわ」

「そう、でしょうか・・・」

「えぇ。まるで恋する乙女のようで、わたくしそういうお顔大好きですわ」



 さすがは甄姫。
顔色で心理状態を読むとは侮れない。
しかし気を付けなければ。
公主という自由な恋愛が許されない身分にある者が、浮ついた表情を終始浮かべていていいはずがなかった。



「恋、だと? 懸想している男の名を言え。兄として挨拶に行かねばなるまい」

「あ、兄上・・・。そのような方、おりませぬ」

「ふふ、我が君、挨拶に剣を持っていく必要はございませんことよ?
 妬いておられるのですね、大事な妹の心を奪ってしまった男に」

「言うな甄。・・・ろくな男では許さぬ。言い寄ってくる男どもは切って捨てろ」




 淡々と語る曹丕に、甄姫と顔を見合わせる。
これは指摘されなくてもわかる。
今の兄はちょっとだけ、拗ねている。



「聞いているのか?」

「はい。兄上よりも素晴らしい殿方はそう見つかりますまい」

「ふ・・・、よくわかっているな」




 やや自慢げに呟いた曹丕の口元は、誰が見てもわかるくらいに緩みきっていた。





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