05.―――  何、コレ



 愛する人の服の趣味が突然変わった時は、いったいどう対処すればいいのだろう。
孫後を代表する将軍なのだから、どんな格好をしていようと誰も文句は言わないはずだ。
こちらだって、目を奪われることはあっても否定的な発言などしようとも思わない。
しかし、これはあまりにも変わりすぎではないだろうか。
なんだか、急に派手で軽薄になったように見える。




「素敵な髪飾りをお召しになっておいでですね、公績殿」

も派手すぎだって言いたいのかい?」

「いえ、そのようなことは・・・。ただ、以前とは大きく変わられたなと」

「ああわかってるわかってる。確実に派手だよな、特に頭」




 凌統は髪飾りを取り外すと、困惑顔で見上げてくる愛しい娘の髪にそっと挿してみた。
こういった華やかなものは美しい女がつけてこそ輝くものだ。
たとえ酒宴の席で女顔だとからかわれようと、れっきとした男がつけるものではない。
少なくとも凌統自身はそう思っていた。




「こういうのはやっぱりの方が似合ってる。俺としちゃ、もう少し明るい色がいいと思うんだけど」

「ありがとうございます・・・。ですが、わたくしは公績殿からいただいたあの髪紐が一番好きです」

「嬉しいこと言ってくれるねえ。けどあれ、焼き焦げて使い物にならないじゃん。ちょっと力入れたら粉々だっての」

「左様でございました・・・」




 今度新しいの買ってやるから好きなの選びなよと言うと、嬉しゅうございますと弾んだ声が返ってくる。
そこらの市場の品で喜ぶなんて、公主とは何だったのだろうか。
凌統はの肩を抱くと、顔を艶やかな髪へと埋めた。




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