お題・6
6.後ろめたさに狼狽える



 まさか、ここまで喜んでもらえるとは思ってなかった。
私は、私からのチョコを受け取り歓喜の涙を流しているイギリスを見つめていた。
材料と愛情の都合でプレゼントしたイギリスへのバレンタインチョコは、包装だけは私が手がけた。
中身はデパートで買ってきた既製品のチョコなのだ。
1箱まるごとイギリス用に買ってきたんだけど食べてみたら美味しくて、結局4分の1だけイギリスに残した余り物なのだ。
他のみんなは味はともかく手作りしたというのに、みんなと同様の喜び方をしてくれるイギリスに真実は絶対に言えなかった。
だって、仕方ないから貰ってやるとか言ってツンデレるんだろうと思ってたんだもん。
プレゼントしたら即で喜び始めるなんて聞いてない。
そのチョコがフランスの家の有名なパティシエの作品だなんて、口が裂けても言えなくなった。




「なぁ・・・、このチョコ、俺にだけくれたのか・・・?」

「うん、まぁ・・・・・・。そのチョコはイギリス用かな・・・」

「そっか・・・」




 イギリスはチョコをテーブルに置くと携帯電話を取り出した。
何をするんだろう、仕事の話だろうか。
イギリスの情勢なんて詳しいことはわからないけど、彼が国である以上、やっぱり何かと忙しいんだろう。



「どうしたのイギリス。仕事あるんなら私帰るけど」

「仕事じゃねぇよ。ちょっと今、他の連中に自慢をだな」

「や、やめて!」

「いいだろ別に、いい機会じゃねぇか。ちょうど今は全員カナダいるし公表しようぜ」

「イイイギリスのは本当に特別なの! ・・・他に人には言ってほしくないなぁ・・・?」




 そう、本当の本当に特別なのだ。
他の人と比べたら確実に手抜き加減が知られてしまう。
私の曖昧な表現を、イギリスは恥じらいと受け取ってくれたらしい。
電話を仕舞うと、焦りで紅くなっている私の頬に手を添えた。
知って悲しむのはイギリスだ。
彼が悲しまなければならない状況を作り出したのは私だが、だからこそ二次災害は避けたかった。
こう見えてイギリスは打たれ弱いのだ。



「日本にはお返しするホワイトでーってのがあるんだろ? 何が欲しいか言ってみろ」

「・・・・・・赦し?」

「何言ってんだよ。ま、俺は心は広いからな、何やっても大抵の事は許してやるよ」

「じゃあここに誓約書あるから今すぐ書いて。『私イギリスは何でも許します』って」




 強引に誓約書にサインさせる。
免罪符って今の時代もあるのだろうか、効果はあるのだろうか。
黙っていることに我慢できずに意気揚々とフランスたちにチョコの自慢をしたイギリスが真実を知り悲しみ、
そして私を怒ろうにも怒れないというジレンマを抱えたのは3日後のことだった。





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