お題・3
3.意地悪



 「ちょっと聞いてよライム!!」




 けたたましい足音と叫び声に、ライムはやや重たい瞼を上げた。
夜勤明けなのだ。
つい先程まで城にいて、ようやく一息ついているのだから勘弁してほしい。



「・・・どうかした?」

「あの馬鹿、今度という今度こそ許さないんだからねっ!
 人のコーヒーに角砂糖4個も入れるとか、ほんとありえない!」


「・・・リグは超甘党だから、あの子なりの親切だと思えば?」




 冗談じゃないとフィルは息巻いた。
どこをどう都合良く解釈してやれば、リグ親切説が生まれるのだ。
親切心でやったのならば、何も知らずにさらに砂糖1個を入れてむせ返った自分を見て笑いはしないはずだ。
あいつは確信犯だ、人の不幸を食い物にしている鬼畜野郎なのだ。



「しっかもなんて言ったと思う? 少しぐらい肉がついた方が女っぽく見えるんじゃないかって・・・っ!!」

「あー・・・」




 人には言っていいことと悪いことがある。
確かに目の前で憤慨している少女は、お世辞にもふくよかな肢体をしているとは言えない。
どこまでも細身で、出っ張りもなければさしたる凹みもないのが事実である。
だから本人がものすごく気にしていることを、悪戯とガキ臭い意地悪でもってからかわれたら堪ったもんじゃない。
怒り具合に多少の違いはあるだろうが、フィルでなくても怒るに決まっている。



「・・・ほんとにリグはフィルがお気に入りなのね・・・」

「ちょっ、もう勘弁してよ! 私このままじゃからかい抜かれて糖尿病で死ぬ!」




 あまりにも可愛らしい喧嘩に巻き込まれ貴重な睡眠時間を奪われたライムは、それからさらに約2時間、
ひたすらフィルの愚痴を聞かされ続けたのだった。





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