07.キスして



 酒には強いと聞いていたが、そうだとしたら今夜はいったいどれだけ飲んでいたのだろう。
は卓に伏せて動かない恋人を見つめ、わずかに眉を潜めた。
酒臭い。
せっかく湯浴みを済ませて綺麗さっぱりしたのに、酒の臭いが体に染み付きそうで長居したくない。
は小さく息を吐くと、柔らかな手つきで凌統の体を揺さぶった。




「公績殿、公績殿・・・」

「ん・・・・・・」

「公績殿、こちらでお休みになられるとお体に触ります。どうかお屋敷に戻られますよう」

「ん、ああ・・・。蓮姫・・・?」

「え・・・? いえ、わたくしは・・・」

「久し振りだねぇ蓮姫、何、起きろって? 俺を起こす時はどうやってたかもう忘れたわけ?」




 これは寝言だ、そうだ寝言に決まっている。
は言いようのない感情を必死に押し留めると、凌統の体を先程よりもやや強く揺さぶった。
むくりと体を起こした凌統が、とろんとした目でこちらを見つめてくる。
ようやくお気付きになられた。
の安堵は、凌統の言葉で一気に粉砕された。




「なあ蓮姫、俺を起こしてくれないのかい・・・?」

「・・・す」

「す?」

「妓楼へ通われることを否とは申しませんが、限度というものはございます・・・!
 あまりにも酷い、わたくしは悲しゅうございます・・・」

「・・・・・・げ、もしかして・・・?」

「失礼致します」

!? 目覚めたから!
 口付けとかされなくても一気に目も酔いも醒めたからほんとすみません様帰って来て下さい!」




 今更何を言われても、当分は近付くものか。
は怒りと悲しさに任せ、居候先の裏庭を爆破した。




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