06.遠距離パラレルワールド



 制服、とそれは言うらしい。
定められている格好にしては随分と他の生徒たちと出で立ちが違うが、それでいいのだろうか。
はどこもかしこも違う甘寧の奇抜な制服(と本人が言い張っている)姿に首を傾げた。




「陸遜殿や公績殿のものとはまるで違うのですが、それで校則に触れはしないのですか?」

「うちは校則なんぞあってないようなものなんでね。
 公主さんこそ学校帰りにこんな不良どもとつるんで買い食いなんてしていいのか?」

「良くはありませんが、ここは父が経営する店ですのでここであればと、大目に見ていただいております」

「へえ、てことは俺との仲もやぁっと親御さん公認になったってことかい。
 喜ばしいねえ、ここまで何度氷漬けにされてきたことか」

「ええ、おかげで私も炎の加減が上手くできるようになりました」

「俺はその過保護すぎるドSの兄貴に何度も殺されかけてきたんだけどね」




 近所の超名門私立校に通うお嬢様(SP付き)のに一目惚れしてから数か月。
凌統はようやく他人でいうスタート地点に立てた現実にこれまでの苦労と修羅場を思い出し、ぐっと拳を握った。
手を繋ごうと伸ばした手が氷漬けにされたこと。
好きだと口を開こうとした直後、空から降り注いだ氷柱とドリル。
歩み寄ろうと近付いた直前、雷撃と共に割れた地面。
今までよく死ななかったものだと、己の強運に涙してしまう。



「まあ・・・、公績殿、そこまで喜んでいただけるなんて・・・」

「いや、俺の今までがようやく報われたと思ったらほっとして・・・。
 これからはもう、命を狙われることもなくなるんだと思ったら男泣きもするっての」

「そのことなのですが、今日はご報告があるのです」

「へ・・・?」

「公績殿にはこれから、我が校を代表する強者たちと戦っていただきたいのです。
 父が言うには、『わしを倒してから行け!というものに憧れておるから』ということです」

「・・・あの、俺がさっきなんで男泣きしてたか知ってて言ってる?」

「はい、ですから大変心苦しいのですが・・・。
 ただ、これを受けて勝った暁には今後一切何の邪魔もしないとの言質はいただいてきましたので、
 公績殿にはぜひ勝っていただきとうございます」




 もちろんわたくしも公績殿と共に戦う所存です、わたくしこれでも鍛えておりますので!
だからどうしてわからないかな、この子がこっちにつくと向こうがもっと逆上するって。
凌統は自信と当然のように参戦することになっている甘寧に向け作戦を展開し始めた負けず嫌いの恋人に、
やり場のない空しさを覚えた。




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