お題・2
2.純白のエプロン



 羨ましい。そう言われても困る。
日本は、自宅に押し掛けてまで嫉妬の念をつらつらと吐き出す国々に曖昧な笑みを返した。




「だってだって、家に帰ったら毎日で迎えてくれるんでしょー。なんかそれって日本ずるくない?」

「そうだぞ! 俺も『お帰りなさい、ご飯にする?それともお風呂?』って訊かれてみたいんだぞ!」

「言いませんよそんな殊勝な言葉、あの子は」



 ずっと昔はそんな可愛らしい事を言ってくれていた、確かに。
しかしこれだけ長い付き合いになると、わざわざ確認しなくても行動パターンは読めてしまうのだ。
顔見れば、お腹減ってるか汗流したいかくらいわかりますとさえ言われたことがある。
嬉しいやら寂しいやら、これがマンネリ化だ。



「俺だったら真っ白なエプロン着てもらって、いや、むしろエプロンだけでいいかなー」

「一瞬のうちに小麦畑とぶどう園が消えますよ、フランスさん」

「俺はまず、何日かかけて俺だけしか見ないようにするよ!」

「言ってること最悪ですよ、アメリカ君」




 やはり彼らにあの子は渡せない。
何が裸エプロンだ。
こちとらちょっと前までは白い割烹着だったというのに、真っ白な布によく映える火照った肌など・・・・・・、他人に見せるのはもったいない。
それに彼女包むのは恐怖ではなく純粋な支配欲なのだ。
ちょっとでも怖がらせるようなことをして、雲の上に実家に引きこもられた事が何度あったか。
家出された時は心が死んだかと思った。



「お2人とも、そんな考えのようではいつまでもあの子を差し上げられません。出直してらっしゃい」



 本当は余所にやるつもりなんて毛頭ないんですけどね。
日本はすごすごと退散していった2人を見送り、ぼそりと呟いた。