お題・3
3.仕事熱心な後ろ姿



 あの凌統が珍しくも真面目に机と相対している。
数ヶ月に一度見られるかわからない光景を3日連続で目の当たりにしている呂蒙は、感激のあまり熱くなった目頭を押さえた。
書物を読めと諭してもやだねと即答し、甘寧を悶着を起こしては叱られていた凌統が遂に改心か。
部下とは、知らぬ間に成長するものらしい。
そういえばかつての自身も驚くような進化を遂げて、周囲の度肝を抜いていたか。
呂蒙は、今まで自らが施してきた教育と涙ぐましい努力は謝っていなかったのだと確認した。




「凌統、あまり根を詰めるものではない。少しは休め」

「んな事やってる暇はないんですよ。これに俺の人生懸かってんですから」

「それほどまでに・・・。お前の働きは俺からもしっかりと伝えておこう」

「それは助かります。味方は多いに越したことはないってね」




 普段の筆不精加減とは全く違い、目にも止まらぬ速さで竹簡に文字を書き連ねていく凌統の目は真剣そのものである。
曹操軍陣営に派遣される使者に選ばれれば、彼女がいるかどうかすぐに調べることができる。
その場で連れ去ることはできなくても、何らかの接触を試みることくらいはできるはずだ。
凌統はここ数日間、使者の選考に携わる周瑜に提出するための身上書を書き続けていた。
今までも幾度となく書面作成には取り組んできたが、今日ほど素晴らしい出来だったものはなかった。




「よし完成! じゃ呂蒙殿、援護射撃と口添えはよろしく」



 使者選考会の会場で呂蒙が受けた衝撃は、計り知れないものだった。





元に戻る