6.お試し見習い期間中ですが



 今日も無事に1日が終わった。
焼死体になりかけた男子学生は見たが、あれは日常の一幕に入っているから事件ではない。
今日は早く帰ってくるって言ってた気がする。
口調も躾も厳しいが、心配は誰よりもしてくれている彼に迷惑をかけてはいけない。
のんびりとしていないで早く帰ろう。
早足で歩き始めたの隣に、細長い影が並んだ。



「よ、。途中までいいか?」

「あ、ククール。うん、一緒帰ろ」



 お姫様を護衛する騎士になりましょうと冗談めかして言うククールに、思わず吹き出す。
ククールとは昔から仲が良い。
本当は一緒に暮らしてもいいくらいの仲なのだが、ククールと家主の反りが合わないので上手くいかない。
兄弟なんだからもっと仲良くすればいいのにとは思っているが、家族間のデリケートな問題に首を突っ込み、
かつそれを解決させるだけの自信はになかった。



「今日兄貴早いの?」

「うん。あっ、ククールご飯食べてく?」

「いやいい。俺だって命は惜しいしな」



 優しい話にうっかり頷きかけたククールだったが、慌てて首を横に振る。
確かにと囲む夕食は楽しいだろう。
兄とも同じだというのは気に食わないが、それでも楽しさの方がきっと勝る。
しかしククールは、とても行く気にはなれなかった。
友人の恋愛成就を応援している男が、率先して友人の想い人と同じ空間にいることは避けるべきだった。
ククールは、かつて友人が手にかけてきた数々の男たちのように、黒焦げにはなりたくなかった。
もっと言えば、友人を敵に回したくなかった。



「そういえばククール、バイトとか興味ない?」

「どんなやつだよ」

「マルチェロさんがね、修道院でお手伝いしてくれる人を探してるんだって。
 回復呪文できる人だと楽だって言ってたからククールどうかなって」

「やだよ、俺ああいう辛気臭いとこやだからこっち来たわけ」

「そっか・・・。じゃあ、ククールの友だちで興味ある人いたら教えて?」



 できれば若くて体力あり余ってる人がいいんだってと付け加えたに、ククールは曖昧な笑みを返した。
人遣いの荒いマルチェロに耐えられるような奴がどこにいるというのだ。
働いても疲れるだけで、もらえる給料も少ないだろうし、損ばかりするに決まっている。
の頼みとはいえ、すんなりと聞き届ける奴はいないだろう・・・。
そう結論付けようとした直前、ククールの頭に、直接的であれ間接的であれ、
彼女の頼みとあらば何だって聞きそうな男が浮かび上がった。






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