お題・5
5.いつから?



 ライムとハイドルは剣の手合わせをしていた。
どちらも相当の手練なので、油断などとてもできやしない。
もっとも、油断や手加減をすることは相手にとって失礼に当たると考えている2人だ。
ちなみに彼らは付き合いたての新米カップルだ。
ミスアリアハンもついに彼氏持ち。
アリアハン中の男たちが涙するだろう。





「あ、ねぇ、そういえば前から聞きたいことがあったんだけど」

「何だろう、ライム」




 剣の訓練も終え一息ついていると、ふと思い出したようにライムが話しかけた。
彼女の問いに振り返るハイドルの顔はとても慈愛に満ちている。
ライムは彼のこの笑みが大好きだった。




「ハイドルは、その・・・。いつから私のこと好きになった?」

「・・・さぁ、いつだろうか」

「え、わかんないの!?」





 ハイドルの意外な返答にライムは思わず叫んだ。
そんなことって、まさか。
絶対に何かきっかけがあると思っていたのに。
思い当たる節は割と多いはずなのに、いつだかわからないとは。
少しショックだった。もしかして成り行き上のお付き合いだろうか。
それは悲しすぎる。




「あぁ、でも初めて月夜に刃を交えた時・・・。貴女をとても美しいと思った」

「でもそれは好きとは違うでしょう・・・?」

「そうだな。・・・それから、洞窟で戦っている貴女を見た時には勇ましいと思った」

「うんそっか・・・。ありがとう・・・」




 なかなか思ったとおりの言葉が得られず、ライムは曖昧な笑みを浮かべた。
褒めてくれるのは嬉しいが、どれも本当に自分が求めている言葉とは違う気がする。
あくまでも自分が発した問いは、好きになった時期なのだから。




「トロルと戦った時に確信したのだ。あぁ、私はこの女性を守り抜き、そして愛したいと願っていると」

「・・・結局そこに至るまでの経緯はわからないのね・・・」

「気付かぬうちに人を虜にするのが貴女の怖いところだ」





 さらりと恥ずかしいことを言ってのけるあなたの方こそ怖いのよ。
ライムは真っ赤になった頬を押さえ、ぼそりと呟くのだった。





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