お題・10
10.触れたら分かる、全部分かる



 囲碁の対局は稀に負けるが、女性経験の華やかさならば負ける気がしない。
一頃色街で名を馳せ浮名を流し続けた過去を持つ以上、今回も後れを取るわけにはいかない。
凌統は、隣に腰かけ滔々と詩を編む恋人をちらりと横目で見た。
寒がりなのか、彼女はこちらの女たちのように薄着をしない。
胸元の開いた服などは持っていないだろうし、着たいと言われても却下しそうだ。
露出の少ない体の実態がどうなっているのか、抱き締めることすら数えるほどしかしたことない凌統には想像するしかない。
細身だが、細いだけではないと思う。
向こうでもこちらでも充分恵まれた生活を送ってきたから、発育は悪くないはずだ。
本当はどうなのだろうか、触って確かめてみたい。
凌統は恋人の無防備に見える腰にそろりと手を這わせた。



「・・・公績殿?」

「あ、ばれた?」

「何をなさっておいでなのですか?」

「いや・・・。変なこと訊くけどさ、その、甘寧に触られたことある?」

「甘寧殿に? ・・・ああ、あったと言えばあったような・・・。
 甘寧殿はお優しい方でございます、わたくしに衣をかけて下さったのです」




 海水に濡れた服は難儀なものにございます。
当時を思い出したのか、眉根を寄せ語る恋人の話に凌統は好敵手の手口を知り、そして悔しさと羨ましさから下唇を噛んだ。





元に戻る