01.黒曜石の瞳



 暑さに負け、いつの間にか眠っていたらしい。
はまどろみから覚醒すると、気にしては温かく柔らかな手触りにゆるりと首を巡らせた。
木に直に触れて体を痛めることを危惧したのか、凌統が抱きかかえてくれていたらしい。
胡坐をかき据わっている長身の凌統の体の真ん中にすっぽりと収まっているのは恥ずかしいが、凌統の心遣いを思い嬉しくなる。
は同じように眠っている凌統を起こさないように体を動かすと、珍しく目の前にある凌統の顔をまじまじと見つめた。
毎日何を食べているのか、女のように綺麗な肌と長い睫毛に思わず見惚れてしまう。
綺麗と言えば、男である凌統は嫌な顔をするかもしれない。
戦っている姿も、思わず武器を振るうことも敵であることも忘れてしまうほどに美しい。
綺麗、たまらずそう呟いた直後、閉じられたままだった凌統の目がぱちりと開きはぱっと体を離した。




「さっきまでの大胆さはもうおしまいかい、
「・・・起きていらしたのですか?」
「こんな僥倖、起きて味わっとかないと損だっての。でも男に綺麗はないだろ、周瑜様じゃあるまいに」
「申し訳ございません」
「でも嬉しかったよ、俺に見惚れてるが見れて」




 眠っている時は静かな凌統は、目を開けた途端にすぐに人をからかう。
目をにやりと細め、決して触れてはこないが言葉で攻めてくる。
まただ、また今日も目と口で弄ばれた。
はじいと凌統を見つめ返すと、精いっぱい悪戯っぽく笑ってみせた。




「わたくしも、わたくしに見惚れて下さる公績殿を見とうございます」
「毎日見せてんだけど、ってことは俺は毎日でれでれしてるのかねえ」




 負けた、今日も負けた。
は自身よりも更に蠱惑的な目を使う凌統の前で、観念したように再びゆっくりと目を閉じた。




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