09.報酬は先払いで



 まだ決まらぬのかと家での悩みの話を蒸し返され、正直嫌だなと思いながらもそれを感情に出すことなくはいと答える。
誰ぞおらんのかと尋ねられるが、いないし見つからないからこうして悩んでいるのだ。
本当にこのまま夏侯覇に無理を言ってしまおうか。
は人魚姫の相手となる王子役を選ぶことも見つけることもできないまま、日々を過ごしていた。




「皆、わしの娘だからと遠慮しておるのか」

「わたくしが至らぬゆえでございましょう・・・」

「そのようなことはあるまい。皆がお前の隣に立つ度量を持ち合わせておらぬだけだ」

「子桓の言うとおりぞ。衆人の前で堂々と振る舞うことができぬものなど我が校にはいらぬ」

「父よ、私も同感です」




 軟弱者だから相手役に名乗りを上げないというわけではないと思う。
相手が甄姫や蔡文姫ではなく自分だから、何の旨味も感じず手を上げないだけだと思う。
いっそ校外からも募り優勝者には褒美もくれようかと言い始めた父に、はおやめ下さいと慌てて異議を唱えた。




「かようなことまでなさらないで下さいませ」

「むう、しかしわしはそろそろホームビデオに夏侯覇とのツーショット以外も入れてみたい」

「それにあれではお遊戯会にしかならぬ。には至らぬ男だ」

「子桓、あれの背の文句を言うことはならん」

「それよりも父よ、褒章をつけるのはいかがなものかと。の隣に勝るものなどありますまい」

「むう、それもそうか」




 話のわかる賢い兄で頼もしいが、あまりうれしくない。
父たちの悩みも壮大すぎて胃が痛い。
は小さく息を吐くと、困った時には父よりも親身になって助けてくれる夏侯惇に頼ろうと決心した。




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