お題・2
02.不変を願う



 きっと家族や友人は驚き、そして信じてくれないと思う。
自分がもう二度と故郷へは戻れないことや、賢者一族の元へ身を寄せるようになったこと。
すべてが非日常的で、信じることの方が難しいと思う。
そもそも、賢者一族という存在自体があやふやだ。
当事者であるこちらとて、未だにすべての現実を受け入れることに心が抵抗している。
疫病神にして命の恩人である男が神代から続く直系の賢者で、
しかし誰よりも力を持たないがために軽んじられているなど信じたくはない。
周囲のせいでこの人の性格は歪んでしまったのだ。





「・・・驚いたわ、あなたは本当に愚者の賢者だったなんて」

「さぞや居心地が悪いとは思う。麓の村にいた方が良いと思う」

「いいえ、それでは今度は村の人たちを巻き込んでしまうわ。
 それに私は決めたの、あなたを誰もが認める立派な賢者にするって」

「・・・無理だと思うがな」

「そんなことないわ。だってあなたは竜になれ「言うな、それだけは口外するな」



 私が愚かだから、一族は保っていられるのだ。
私の魔力がないから、アレフガルドはラダトーム王国のもので在り続けられるのだ。
暗黒の時代に、力を持たない者が竜になどならない方がいい。
不遇で不条理な運命を受け入れるミモスには、外野のこちらが言えることはない。
それでも私はあなたを賢者としてではなく、人として信じているからここに留まると決めたのに。
アリシアの言葉は、声となることはなかった。





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