お題・4
04.瞳の奥に閉じ込めた憧憬



 いつからこんな大事件に巻き込まれていたのか、きっかけを思い出せない。
思い出せないが確かに何かがあったことで恋うしていることくらいは察しがつくのだが、
それが何かわからないから気分が悪い。
ただの一アレフガルド民に過ぎない自分に魔族が何の用があるというのだろう。
アリシアは突如降りかかった我が身の災難に戸惑いと怒りと恐怖を感じずにはいられなかった。




「このようなただの小娘が賢者の加護を受けたとは、到底思えませぬが・・・」

「それこそ人の妙たる所以じゃ。おかしくてひ弱で、情に流されやすい哀れな種族」

「己が守ろうとしたことが娘を殺す結果になるとは、さすがは愚者のミモスよ」

「ち、ちょっとまってよ・・・。あなたたち、何を言ってるの・・・?
 私は賢者なんてそんな大層な人のこと知らないし加護だって受けてない。勘違いしてるんじゃないの!?」

「黙れ人間風情が!」

「きゃ・・・!」




 凶悪な魔力の風で壁に叩きつけられ、呼吸ができなくなる。
だからいったい何だというのだ。
長老といいこいつらといい、自分が何をしたというのだ。
賢者の加護?
そんなものがあるならばどうして今襲われている。
どこの賢者だか知らないが、一度加護とやらを与えたのならば責任持って最後まで守ってやってしかるべきではないか。
女一人守れないなど、賢者以前に男として最低最悪だ。




「・・・・・・賢者・・・? ・・・男・・・?」

「その身に宿した精霊の力、頂くぞ!」

「や、待って・・・やめ・・・っ「だからあれほど私を思うなと言ったのに」




 あの時の威勢はどうしたんだと耳元で囁かれ、声で凍り付いていた頭のどこかが一気に解ける気がした。
体を包み込んだ柔らかい光は、緩やかに形を変えながら魔物たちを圧倒していく。
愚者と呼ばれようが、お前たちに後れを取るほど私は愚かではない。
そう静かに言い切った銀髪の青年は、アリシアを片腕に抱いたままイオナズンを唱えた。





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