お題・10
10.美味しい共同生活の誓い



 いい? まず、3食美味しいご飯がついてるのは当たり前の前提条件だからね。
ほんとは昼寝付きってのもつけたいけど、それはまあいいや。
乱暴振るうのはもちろん駄目。酒癖が悪い人は願い下げ。露出狂は論外。
お姫様扱いしろとは言わないけど、優しくしてくれる人は大歓迎!
人を扱き使わずに一緒に協力してくれる人がいいなー。
あ、あと、これ一番大事だ!
家庭菜園作っても怒らない人。
野菜とかとにかく農作物好きの人じゃないと、私住めません!



「ということで、これら条件全部満たせる人挙手!」




 ・・・結構絞ったはずなのに、全員の手が挙がっているのはなんでだろう。
私はため息をつくと、とりあえずイギリスを指差した。



「イギリスは無理でしょ。ご飯は不味いし酒癖悪いし露出狂の三重苦」

「な・・・っ! り、料理は愛情だ、ばかぁ!」

「愛情でカバーできないところもあるんだよ」

「そうそう、くたばれイギリス」

「そう言ってるフランスとアメリカも駄目だからね。露出狂と味覚崩壊大国は却下」



 手始めに3つの国を除外し、残る人々をぐるりと見回す。
ううむ、ここからの選別が難しいのだ。
いっそ最後の1人になるまで争えとか言ってみたいけど、それを言ったら最後、世界が滅びそうだしなぁ。



「俺のとこにおいでよ! 俺パスタ作るしシエスタもさせてあげるし、一緒に畑も作ろうよー」

「うーん、ヴェネチアーノもいいなー。でも浮気癖あるのやだかも・・・」

「猫も、待ってる・・・・・・」

「ああ! ギリシャのとこは私の体質的にもぴったりだし雲の上の実家へも近道だけど!
 ・・・・・・無理、体保たないや・・・」

「北欧代表で俺んち来っぺ!」

「デンマークかー・・・。どっちかっていったらアイスランドの方が・・・・・・、げ」



 しまった、墓穴を掘った気がする。
決まりだねとぐいぐい腕を引っ張っていくアイスランドに慌てて制止の声を上げる。
アイスランドは駄目だ。
食べ物云々以前に、まずもって会話が成立しない。
そんな生活は送りたくない。



「アイスランドがいいって言ったんじゃなくて、北欧代表の中ならって話だからね!?」

「そうやで! 勝手に連れてくとか意味わからへん!」

「それはアイスランドの口癖だよスペイン」




 わあわあがやがやとプチ戦争モードの突入した会議室に、遺憾の意ですとばしりと叫ぶ日本さんの声が響き渡る。
恐ろしい笑みを顔に張り付けこちらへやって来る日本さんの言葉を考えるだけで泣きたくなる。



「それは、今現在一緒に住んでいる私への不平不満と挑戦状とみなします。
 減らず口叩けなくなるまで余所には出しません!」



 日本さんのぶち切れた一喝に、私の家出大作戦は今日も潰えたのだった。





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