5.独占欲を垣間見せて



 また見てしまった。
明らかに恋文と思われる淡い色の紙切れを、頬を染めた女官から受け取っている趙雲を。
改めて確認するまでもなく、趙雲は劉備軍の錚々たる将軍たちの中で一番かっこいい。
公にこそしていない(つもりだ)が、そんな素晴らしく人気のある男の恋人をこなしているは、
彼が他の女性から物をもらうのを見るのがあまり好きではなかった。
うかうかしていると他の女性に奪われてしまうのではないかと、不安な気分になったりもする。




「・・・私ももう少し綺麗にした方がいいのかな・・・?」




 宮中で着飾る女性たちのように、華やかになれる自信はなかった。
花を活けるよりも、どちらかといえば草原に群生している花を摘みに行ったり駆け回る方が好きだし、淑やかさとは無縁だ。
元気なのはいいことだと兄や従兄は言うが、身内の意見ほど当てにならないものはない。




「いっそのこと私も宮仕えしたら・・・!」

「それはやめてほしいな」

「趙雲殿! ・・・なんでですか、私には向いてないですか?」

「それもあるが・・・、殿が働くとなると、私は気が気でない」




 趙雲はにこりと笑うとを見つめた。
こんなに可愛い娘を無防備に衆人の目に晒してたまるものか。





「・・・私も、趙雲殿が女の人から恋文とかもらってたら気が気でないんですよ?
 趙雲殿は私の大切な人なのに」




 可愛すぎる、なんだこの愛らしい生き物は。
の可愛すぎる自己主張に、趙雲は絶対に彼女を女官になどさせるものかと決意した。




元に戻る