03.蕩けそうな微笑


　ゆったりと、しっとりと、ふわりと微笑む全身から滲み出る上品さ。
持って生まれた気品のようなものが、彼女の魅力を更に引き立てる。
同じ姫君とはいえど、環境が違うだけでこうも変わってくるものなのか。
妹にも、この公主の小指一本分でもいいから淑やかさが欲しかった。
孫権は宮殿の隅に咲いている花を摘み取り、花に向かって微笑んでいるへ歩み寄りなぜだと呟いた。



「なぜ、とは？」

「何をしたらそう淑やかな女になれる。書か？　学問か？」

「特にこれといったことをした記憶はございませんが・・・」

「虎狩りに行けば淑やかになるのか？　水賊を倒せばお前のようになるのか？」

「尚香殿は素敵な姫君でいらっしゃいます。明るくて凛としておられるところなど、羨ましくてたまりません」




　私は時折、具合が悪いのかと訊かれてしまうほどに大人しいようですから。
花を携え困ったように微笑むの姿は、やはりとてつもなく洗練されているように見受けられる。
あの凌統が惚れ込んだ女性とは思えないくらいに、ひたすら上品だった。




「嫁に出す前に、お前に姫君としての心得を指南させるべきだった」

「わたくしは、そのようなことを学ぶ前にこちらへ来てしまったのですが・・・」




　知らずにいて今とは恐ろしい。
孫権はふわりと柔らかな笑みを浮かべているを見つめ、ほうとため息をついた。




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