目覚めの時




 ―――トロデーン城に道化師が現れた。
彼の名はドルマゲス。
道化師にしてはあまり面白くのないその動作に、ファンは少ない。
しかし、そんな売れない道化師、ドルマゲスがこの城にやって来たのは別の目的があったからだった。





彼が手にしたのは、このトロデーン城に代々伝わる家宝である杖だった。
王はおろか、城の知識者ですらこの杖の効力を知らなかった。
それをドルマゲスは知っていた。
そして、彼がこの杖を振るった時、城は茨に囲まれた。
城の人々は皆、茨人間となり、死んだようになった。
生き残ったのは、魔物の姿に変えられたトロデ王と、
同じく呪いで姿を馬に変えられたミーティア姫、姫の幼なじみであり、城に勤める兵士、だった。




「わしは見たのじゃ。あの、あのドルマゲスが杖を手にしたとき、
 美しい光を宿した何かが外へ飛んでいったのを。
 それが何だったのかはわしにも姫にも皆目検討がつかぬ。
 しかし、もしそれがこの杖と何か係わり合いがあるとしたら、
 それはわしらの希望かもしれぬ。」



王は自分が見た杖から発せられた光について熱弁した。
王がこうまで真剣に言うのだ。見間違いではないだろう。
しかし、そんな光がいったい何を意味するのか、には予測のしようがなかった。
当然である。彼はその光を見ていないのだから。
しかし立ち止まっているわけには行かなかった。
城を呪った直後にその場を去ったドルマゲスと追わなければならない。
そして、呪われた彼らを再び元の姿に戻さなければいけなかった。








 どこか遠くの城でそのような悲惨極まりない事態が起こっている頃、
1人の少女がマイエラ修道院に姿を現していた。
彼女の名前は
記憶がないため、名前しか知らなかった。
行くあての無い彼女は修道院に仕える聖堂騎士団長の好意によって、その近くに暮らすようになった。
彼女は魔力が強く、並みの呪文ならすぐに覚えることができた。
さらに、透き通るようなその声で歌う歌は人々の心を安らかにさせた。
しかし、そんな彼女の存在を知る者は少なかった。
そして彼女も、世界を知らなかった。





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