白と黒の玉座




 若き王が治めるアスカンタ地方―――。
達はこの地方の中心都市であるアスカンタ城へ来ていた。
しかし、城下町という華やかな様子を想像していただけに、現実とのギャップにはあまりにも驚かされた。
この町には色が無かったのである。








 「どこもかしこも白と黒ばっかり。
 何でこんな事になってんのよ。
 しかも大声も上げちゃいけないなんて。」





ゼシカがいち早くこの状況の文句を言う。
彼女ほどではないが、確かに彼らはこの異様なまでの静けさ、
そしてなんとも言えないような空虚な感じには戸惑いを覚えていた。




「白と黒の幕なんてまるで・・・。」
「葬式の真っ最中みたいだな。」





の後を続けるようにしてククールがつぶやいた。
住民達も喪服を身に纏っているあたり、その線は濃いだろう。
だが彼らは、さらに住民達に話を聞いていく事によって、その喪中の恐るべき長さに驚かされた。








この国は、2年もの間若くして亡くなった王妃、シセルの死を悼んでずっと喪に服しているのだった。
王に愛され、そして死んでいった王妃の目に、今のこの状況はどう映っているのだろうか。







 このままでは埒が明かないと悟った達は早速城主、パヴァンの元へと行った。
しかし王はいまだに悲嘆に暮れ、時折うわごとのように王妃の名を呟くだけだった。










「ここの王様、ずっとこのままなんだよね。
 いずれこの国、おかしくなっちゃうかも・・・。
 それにこのままじゃドルマゲスの手がかりも得られないよ。」


の言うとおりだよ。
 ここの王は今何を聞いたってどうせ何も答えてはくれやしない。
 話を聞いてるかも怪しいのに。」








なす術のなくなったが口々に話していると、
背後から若い女性の声がした。






「あの・・・、王は今は何を言ったってお話になられません。
 嘘だと思ったら夜にもう1度ここに来てみてください。
 ・・・王はずっとあのままですから。」




キラと名乗ったその女性はそう言うと自分の仕事へと戻っていった。
が、その前にもう一度振り向いて、




「王にせめてもう一度だけ幻でもいいから王妃の姿を
 見せてあげたらいいのですけど・・・。」


「でもそんな事無理よ。
 王妃はすでにお亡くなりになってるんでしょ?」



「でも・・・、確か私昔おばあちゃんに願いが叶う丘について
 聞いたことがあります。あれ、どこだったかな・・・?」





1人でそう言うと、彼女は考え込んでしまった。
その姿は大切な王を何とかして助けてあげたいと願う気持ちがよく現れていた。
こんな彼女の姿を見た何もしない達ではない。
が不意にキラに尋ねた。






「キラさんのおばあさまのお家はどこにあるの?」






この一言で彼らの考えは定まった。
この国を、この王を、その女性を見捨てるわけにはいかなかった。
確かにドルマゲスの消息も大切だ。
急ぐ旅ではある。
けれども目の前にある問題を解決する事もまた大切な事だった。





キラはの言葉に活路を見出したのか、
キラキラを目を輝かせて言った。





「おばあちゃんの家はここからちょっと行った先にある橋の辺りにあります。
 近くに教会がありますから、すぐに分かると思います。
 みなさん、王のこと、よろしくお願いします!」









ここに達の願いを叶える丘への登頂が決まった。














は、叶えて欲しい願いってある?」






がふとに尋ねた。
彼は少し考えて、そして、





「そうだな・・・、僕はやっぱり早く姫様や王の呪いを解きたい。
 でもこれは僕達がドルマゲスを倒さないと叶わない事だから。
 ・・・は何かあるの?」





「私?私はね、早く自分が何なのか知りたいな。
 記憶が無くて不自由した事は無いけど、
 やっぱり私の事を知ってる人が誰もいないって言うのはちょっと寂しいもん。
 でも、それは達のおかげで叶えられそうだけどね。」





そう言うとはにっこりと微笑んだ。
彼女はこの旅が楽しくて楽しくて仕方がなかった。
旅の使命は重いけれども、仲間たちと協力して旅を進めていくことは使命とか、
そういう事を抜きにしてもやはり楽しいものだった。
そんな気持ちが自然と顔にも表れてくるのだろう。
彼女の微笑みはとてもかわいらしかった。
心がほんのりと暖かくなるような、そんな笑顔に包まれていたいと願うだった。




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