変わらぬ愛の誓い方




 ふと気が付くと達はアスカンタ城内の大階段の前に立っていた。
彼らの隣には淡く微笑したイシュマウリ。
彼の手にはもちろんハープが。
行くべき場所は決まっている。
悲しみの王のもとだった。










 この日のパヴァン王も悲しみに沈んでいた。
本当にイシュマウリの力で彼の悲しみはなくなるのだろうか。
誰もがそう思ったに違いない。
そしてまた、自身もこの行動で果たして王が気力を取り戻すのか心配だった。
その不安さが顔に表れてしまったのだろうか。
は背後から優しく肩に手を置かれた。
その手はのものだった。彼は優しく笑いかけながら、






なら大丈夫だよ。
 の歌はすごく綺麗だし、きっと王の悲しみだって解けるよ。
 いつも通りでいいってあの人も言ってるんだし、
 それに僕はの歌、
 もう1回聞きたいな。」





何気ない一言でも、その言葉はを勇気付けるのには十分だった。




「ありがとう、
 私、歌う。
 歌う事が大好きだから、私は歌うわ。」






そう言うと、はゆっくりとイシュマウリのほうを向いた。
そして軽く頭を下げる。
どうやらそれが歌の始まりの合図らしい。
彼女を見てイシュマウリは深く頷き、目を閉じた。
ついで彼の手が動き出し、ハープからは美しい音が流れてきた。
は歌い出した。









 何処へ行くの、この哀しみは。
 あなたと別れても、いつか必ず逢えると信じて。
 たとえあなたと離れる時が来ようとも、
 私は永久にあなたを愛す。
 この身が朽ちてなくなるときも
 私はあなたを忘れない。
 お願い、私のことを忘れないで。
 私のことで悲しまないで。
 あなたの笑顔は私の幸せだった。
 いつまでも笑ってて。
 私は永久にあなたを愛し続けるわ。














 の歌は夜の城の中を流れていった。
気のせいか、いや、そうではないだろう。
気が付くと涙の跡も残る王の周りに在りし日の王妃が現れた。
その美しい王妃―――シセルは、くるくると回りながら、幻想の中の王に語る。
その言葉はまるで今、彼女が生きているかのように聞こえた。
王はゆっくりと玉座から腰を上げると、
王妃につられるようにして屋上へ向かう。
そして、当時は朝だったのだろうか、朝焼けが綺麗と呟く王妃の隣で現在の王は微かに笑った。
その笑いは輝かしいものだった。
王の悲しみの呪縛は解けた。












 は歌いながらいつの間にか泣いていた。
声を立てるでもなく、ただ涙を流していたのだった。
それがなぜだったかは分からない。
ただ、歌っているときは一心に王と王妃を想った。
王妃には会った事はないけれども、きっととても王に愛された女性だったのだろう。
イシュマウリの力で現れた過去の王妃はいつでもにこにこと笑っていた。
そして王を支えていた。
そんな彼女が亡くなって、王が悲しまないわけが無かった。
しかし、彼の悲しみは国の悲しみ、王妃の悲しみでもあったのだ。
それを王妃を見た王は思い出した。
今は彼女のために立ち直ったのかもしれない、
でもそれはいつか、必ず本当の強さを見せる時が来るだろう、とは思った。






歌が終わり、イシュマウリはまた大きく頷きながら言った。





「やはり貴女の力は必要だった。
 その力を決して失くしてはいけない。
 貴女と一度きりしか会えないのが心残りだったな・・・。」






そしてハープの調べと共に消えていった。
















 「ここの王ってさ、結構優秀だったのかもしれないわね。」



「どうして、ゼシカ?」
「だって私達が来た時から彼は泣いてばっかりだったのよ?
 私達の事なんて眼中にないのが普通じゃない。
 なのに、王様は私達を歓迎。
 こんなご馳走まで頂いちゃって。だから。」







今、達5人の目の前には食べきれないほどの料理の山が置かれていた。
王からの、自分を立ち直らせてくれたささやかなお返しらしい。
これがささやかなのだから、普通にしてもらったらどうなっていたかは分からない。
小国とはいえ、王国の力はさすがと言うべきものである。






、あの歌すごかったぜ。
 俺、そういう歌には慣れてるつもりなんだけど、
 こう、胸が熱くなって泣きそうになったぜ。」



「あっしもでがす。あっしは歌とかそういうもんには全然疎いんでがすが、
 の嬢ちゃんの歌は
 なんて言うか、胸の奥が熱くなったんでがす。」







仲間達から次々と賞賛の声を聞き、は恥ずかしくなって顔をうつむけた。
耳まで赤くして照れている彼女の姿はそれは初々しくて可愛かった。
はそんな彼女の隣で王と話している事も適当に聞き流して見とれていた。
歌も上手くて、戦闘もそこそこ出来る。力はないけどものすごい魔力の持ち主、
彼女の謎が少しでも解ければいい、とは心の中で思っていた。











 町の外でトロデ王がかんかんに怒っていたのはまた、別の話。




back next

DQⅧドリームに戻る