闇へようこそ



 ベルガラック―――。世界で一番大きなカジノを持つ有数の歓楽街。
そのくせ治安はものすごく良く、まさに憧れの土地である。
が、今のベルガラックはちょっと違った。
カジノは閉鎖され、観光客も来ないただの町になってしまったのだ。
そして達は偶然にも、この魅惑の町に起こった大事件の真相を知った。
カジノオーナー、ギャリングがドルマゲスによって殺されたのだった。







 「なんで奴はカジノオーナーなんて殺すんだ?
 今まで殺された人はみんな偉大な人ばっかりだったくせに。」


「でも彼は人を無差別に殺してるわけじゃなくって、選んでるわよ。」



「ゼシカの言うとおりだと思うよ。だけど、だったら彼の目的はなんだろう。」






豪華な宿の2階の隅で5人は額を寄せ合ってひそひそと囁き合っていた。
ついさっき、この場でギャリング殺害を知ったのである。
しかも殺されたのはごく最近の事らしい。
達のリサーチの結果、ドルマゲスはその後北の海を歩いていた事も判明した。
海を越えた先にあるのは太古の昔、邪心を崇める者達の聖地とも言える闇の遺跡があった場所だ。
年中薄紫の気味の悪い雲に覆われており、内部は負の力が充満しているという。
ギャリング一家の自警団達が船であの地へ向かったらしいが、どうにも彼らだけでは心もとない。
そこで達は考えた。
自分達もそこに乗り込んでみようじゃないかと。











「よし、みんな、闇の遺跡に行こう!!」




の掛け声に4人はそれぞれ賛成の意を伝える。
今すぐにでも行こうとする男達をゼシカは待って、と言って引き止めた。






「その前に・・・、、服買いに行きましょ。
 ここ裂けてるわよ。」



「えぇっ!? やだ、いつからだろ・・・。」





顔を真っ赤にして慌てふためくを微笑ましく眺めるゼシカ。
かと思うと思い出したようにに手を差し出す。







「という事で服代ちょうだい。大丈夫、私が可愛くコーディネートしてきてあげるから。
 ベストドレッサーコンテストでも優勝できるぐらいにね!」




可愛くコーディネートという言葉を受けゼシカにどっさりと金貨を渡す
この世界にそんなコンテストは存在しない。


































 服選びをしている女性2人を待つために、とククールは仕方なく公園の近くのベンチで暇を潰していた。
ヤンガスが情報収集をしてくれるから安心だ。








「俺、お前と2人っきりでベンチになんか座りたくないんだけど。」


「そんなの僕だってそうだよ。でもが可愛くなるならこのくらいの屈辱耐えるさ。」





の発言に首を傾げるククール。
何かがおかしい。
何がおかしい、のこの淡白さだろうか。






「お前さ、の事好き?」



「うん、大好きだよ。それがどうかした?」







淡々と答えるにククールは頭を抱えた。
いちゃいちゃしている2人だが、実のところどうなのか、そこら辺が気になって仕方ないのだ。






「それは愛してるって事だろ? ・・・それに言った?」



「・・・、ううん。だっても僕の事好きだよ。」



「そこがおかしいんだよ。
 確かにの事好きだろうけど?
 でもそのままだとずっとこのままの関係のまま一生を終えるぞ?」





は考え込んだ。
の事に関してははっきり言える、一目惚れだったのだ。
出会いはあまりロマンチックではなかったけれど、戦っている彼女は女神のようにすら見えた。
モグラのアジトで彼女が消えた時はブチ切れたし、イカを怖がっている彼女を可愛いとさえ思ったほどだ。
が自分の事を好きなのも、自惚れているのかもしれないがちゃんと知っている。
ただお互い、『愛してる』の一言を言っていないだけなのだ。











「やっぱ言った方がいい? 愛してるって。」


「そりゃそうだろ。唾つけとかないと奪られるって。」


「それは大いに困る。・・・よし、ドルマゲス倒したら即行で告白しよう。
 その日は近いね。」





明日仮にドルマゲスを倒せば明日告白、来年倒したら来年告白。
結構気の長いことだ。













「あ、、ククール!! どう、可愛いでしょ!!」




 ようやくお買い物を終えたらしいゼシカと達の元へやって来た。
恥ずかしげにゼシカの後ろにが隠れている。





、可愛いでがす。」





誰よりも先にゼシカ達の背後から来たヤンガスが感想を言う。
後ろから言われ吃驚したはその弾みでぴょんと前へ飛び出る。
淡いグリーンの上衣に足首辺りまであるこげ茶色に金糸の入ったふわふわのスカート。
腰にはどこから調達してきたのか、以前からが密かに欲しがっていた扇が装着してある。
なんと愛らしいことだろう。
とククールは思わず見惚れてしまった。







「そんなに見ないで・・・、恥ずかしいっ!!」



「ゼシカ、新境地を開いたね。
 お嬢様みたいでむちゃくちゃ可愛いよ、。」



「やだっ、、そんな事言わないで・・・。」






放っておいたら再び際限のないいちゃつきを見せられると見切ったヤンガス達は2人をそのまま強引に船へと連れて行った。
行き先はもちろん闇の遺跡だ。

































 闇の遺跡はその名の通り、禍々しい力で満ち溢れていた。
立っているだけでも気持ちが悪くなる。
逆にこの力を快感としてしまう方がまずいのだが。
ちょっと恐ろしくなった5人は1人ずつ縦に並んで入ることになった。
まずヤンガスが入り次にゼシカ、ククールと続きが入ろうとした。
が、何かに阻まれるようにしては中に入ることが出来ない。







「どうして? なんで私だけ入れないの?」





何度も何度も体当たりをするようにしても、の身体は髪の毛1本すら遺跡内に入ることを許されない。
不思議に思ったが手だけ突っ込んでみる。
すんなりと入るそれには泣きそうになった。








「ねえどうして? 私はみんなと一緒にドルマゲスと戦えないの!?」




悲痛な声で叫び、の腕を揺さぶり続けるは見ているだけでも痛々しかった。
5人が遺跡に到着したちょうどその時、ドルマゲスがニヤリと笑みを浮かべながら中へ入っていったのをこの目ではっきりと見たのに。
今彼が確実に遺跡内にいることを知っているのに、自分だけ入ることの出来ないという事実を突き出され、悲しみのあまりはその場に崩れ落ちた。
かける言葉も見つからず、肩を震わせているをそっと抱きしめる
少ししてヤンガス達が中から出てきたが、その表情に生気は見られなかった。









「だめでがす。中は真っ暗で何も見えないでがす。」


、気を落とさないで。
 私達だって何も出来なかったわ。もっと強くならなくちゃ。」



、みんなもそう言ってるよ。
 きっと中が明るくなったらも中に入れるようになるよ。
 だから探そう? その方法を。」





達の慰めにこくりと頷く
立ち上がると背後にそびえる台座へと足を向け、台座の文字を読み上げた。







「太陽の光照らす時、道もまた開ける。
 ここに太陽を持ってくるのね。私一生懸命探す。」





そう言うとは遺跡の入口を睨みつけた。
絶対に入ってやる。
新たな闘志の誕生であった。 



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