暗黒魔城都市




 元気いっぱいのレティスの雛鳥の力を借りてたちが向かったのは、暗雲渦巻くラプソーンの居城だった。
毒々しい紫色のその城は、1歩足を踏み入れただけで呪われてしまいそうなほどに気持ち悪かった。





「覚悟はしてたけど・・・、趣味は最っ悪ね。」


「ドルマゲスといいラプソーンといい、世界を滅ぼそうとしてる連中にろくな奴はいないでがす。」


「でも・・・、ここ気分悪くなっちゃうね。早く入ろ?」






 都市というぐらいだから入ってすぐにラプソーンと戦えるわけがない。
こんな入口でぼんやりしている暇はないのだ。
勢い良く中へと侵入した彼らを待ち構えていたのは、大量の魔物の群れだった。





















































 いったいどれだけの階段を上り、廊下を駆け巡っただろうか。
行けども行けどもラプソーンに近づけない。
敵の本拠地に書斎があるなんて聞いていない。
客室なんか要らないじゃないか。
は本棚からめぼしい本を漁りながら独りごちた。







「ここまで来たのに錬金レシピ探してるの?」


「ここにあるぐらいだからきっと強力なんだよ。ラプソーンとの戦いに備えて、少しでも武器とか強くしとかなきゃ。」


「ほんとに熱心だね。平和になったら錬金博士にでもなったら?」





 は手に取った本が錬金の本だと知ると、すぐさまに手渡した。
ものすごい勢いでページをめくり、何やらメモをしている彼だけを見ていると、ここがどこなのか忘れてしまいそうになる。
書斎で油を売っているほど安全ではないのだ。
しかし仲間のためを思ってであろう、一心不乱に錬金レシピ探しに没頭しているは周囲の空気をシャットダウンしていた。
彼のオーラの中に自分がいることが、にとっては嬉しいのだが。







「みんなは?」


のために、呆れながらも本開いてる。ラプソーンに関する情報も欲しいしね。」






 は本棚に視線を移した。
どの本もかなり古びてはいるが、読めないことはない。
ほとんどが魔族賞賛・人間卑下の内容なのがいただけないが。
書名を指でなぞっていく手が止まった。
聞いたことがある単語が書かれていたからだ。
はちらりと隣のを盗み見た。
本にのめり込んでいるせいか、悲しくも自分のことは見てくれていない。
は誰にもわからないように素早くその本を抜き取りページをめくった。
ある1つの確信めいたものを抱いていたのだ。
魔族側の書物だからこそ、自らが滅ぼしたというその功績は書き残されているかもしれない、と。






「あった・・・・・・・。」




 片側一面にびっしりと、絵付きで紹介されていた。
通商白翼族、白い翼を持つ生きながらの天使。
その声には闇を光に変える力が秘められているものの、恐れるに足りない存在。
争いのない世界でのみ暮らしてきた脆弱な種族なので、何の抵抗もなしに滅ぼすことに成功した。
翼を持つ種族の片割れだが、他者の力を借りねば何もできない点からすると人間以下である。
あまりのひどい記述に、は思わず眉を潜めた。





「ひどい・・・、他力本願でもあの人たちは平和を愛しているだけだったのに・・・。」






 は隣のページもついでに覗いてみた。
白翼族と同格の翼を持つ種族でありながら、対を成す存在である竜神族。
その単語には聞き覚えがあった。
聖地ゴルドでマルチェロと対峙した時に聞いたのだ。
大人しいのかどうかは不明だが、異界に住まう種族と言っていた。
異界と呼ばれる場所が具体的にはわからないが、今も生きているのだろう。
その力は強大で恐るべきものだと書かれている。






「世界は広いな・・・。」


「え、今更そんなことに気付いたの? 僕たちいろんな所を旅したじゃんか。」






 錬金レシピには一区切りついたのか、いつの間にかの手の中の本を覗き込んでいた。





「なんだか難しい本読んでるね。でもこの天使、すごく綺麗だ。」


「て、天使じゃないみたいだよ。白翼族って言うみたい。」




 内心の動揺を悟られる前に、は慌てて本を閉じた。
今、何かあるのではないかと勘繰られてはいけない。
正体を見破られてはいけないと思ったのだ。
あまりにも力強く本を閉じたせいで埃が舞い上がる。
かすむ視界と埃臭さにまぎれ、不意にが圧し掛かってきた。






「さすがラプソーンのお膝元だね。油断も隙もないや。」


「・・・何匹いるの?」


「3匹いるけど2匹はヤンガスが相手してる。」





 は体勢を立て直すと魔物に切りかかっていった。
も立ち上がりつつ火球を生み出すと、無防備な敵の背中に向けて投げつけた。
先程までのんびりと本を開いた場所は凍りついているので、が気付かなければ今頃氷像と化していただろう。





「ちょっと注意力散漫だったかなっ!」




 は己の不注意さに反省点を見出し苦笑した。
そしてお返しとばかりに周囲の本をすべて焼き尽くす勢いで、紅蓮の業火をお見舞いしたのだった。



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