どこで食べようかと突っ立っていると、おーいーと大声でこちらを呼んでくる声が聞こえる。
ぶんぶんと大きく手を振っている円堂の無邪気で元気いっぱいな姿に心がほんわかと温かくなり、ゴールポストに寄りかかっている円堂に倣い腰を下ろす。
腹減ったなぁと言い特大サイズのおにぎりを頬張ろうとしている円堂に、は慌てて制止を求めた。
つい先程まで地面に這いつくばってシュートをセーブし続けていた円堂の手は、グローブをしていたとは思えないほどに汚れている。
そんな手でおにぎりを頬張ったら、せっかくのおにぎりの美味しさが台無しだ。
はきょとんとした表情を浮かべこちらを見つめてくる円堂の顔を両手でつかむと、黙って手洗い場へと向けさせた。
「・・・へ?」
「て、洗ってないでしょ」
「あー。でも腹減っててさ!」
「それでも手は洗うこと。汚れた手で食べてお腹壊したらサッカーどころじゃなくなるでしょ」
「でも・・・・・・」
「・・・私も行って洗うから、一緒に行こう?」
「・・・、ももしかして手洗ってないんじゃ「円堂?」
手はとっくに洗っている。
石鹸も使いぴかぴかに輝くこの手が円堂には見えないのか。
はたかが手洗いの何が楽しいのか、うきうきと軽い足取りで歩き始めた円堂の横顔を見やった。
明日からも円堂を見ていなければ、また彼は手を洗うのを忘れそうな気がする。
げ、タオル忘れたユニフォームで拭いていいかなと手洗いの努力をすべて無駄にするような提案をした円堂に、はすかさずハンカチを差し出した。
みんなでわいわい食べてるんじゃないかとか、そういうとこにツッコミは入れないでほしい