プライスレスの鑑賞料
今日はいつにも増してがご機嫌だ。
豪炎寺と一緒に登校しているというのは毎日と変わらないのに、今日は喧嘩をしなかったのだろうか。
珍しい日もあることだ。
今日は夕立が来るかもしれない。
半田はにこにこ笑顔でおはようと挨拶するに、元気だなあと声をかけた。
「どうした、今日機嫌いいじゃん」
「わっかるー?」
「顔にっこにこだぞ。さては風丸に会ったな?」
「ノン。あっ、でも会ったっていえば今もここに風丸くんいるよ!」
はまた笑顔を浮かべると、鞄の中から紙を取り出した。
見て見てどうよと自慢げに突き出された紙に半田は視線を落とした。
がご機嫌な理由が3秒でわかった。
「これね、今朝校門前でもらったんだ!」
「へえ・・・。上手く描いてもらってんじゃん」
「でしょでしょ! 美術部の人らしくてね、私のことずっと知ってたらしくて描いてくれたんだ!」
「ああ、だから風丸か。結構見られてんだなって思ったけど、ってそんなにあちこちで風丸とハグしてんのか?」
「いや、サッカー部の時くらい? 私だって命は惜しいから、そこらであってもよしよししてもらうに留めてる」
は紙を手に持つと、嬉しいなあ上手だなあときらきらと瞳を輝かせた。
可愛いなあ私絵になるなあとは、思っていても胸のうちに仕舞っておいてほしい感想だ。
半田は改めて絵を見つめた。
そして、一緒に登校してきた豪炎寺の機嫌が悪い理由を察知した。
なるほど、これは確かに豪炎寺としては本意ではないだろう。
「風丸よりも俺の方がと一緒にいる時間は長いのに、どうして風丸なんだ」
「描いてもらってるからいいじゃん。この人たぶん、描きたさにわざわざ俺らの試合観に来てくれてたんだぜ。だから背中のおまじないあるじゃん」
「そうよそうよ。こんなに可愛い幼なじみいる幸せもっと噛み締めなさいよ。ほーんと修也にはもったいない可愛さ!」
「・・・美化されて描いてもらってるって気付いていないみたいだな」
「なっ、ひどっ! ひっど修也! 言うに事欠いてなんてこと言うの!」
むうと眉を潜めたが豪炎寺からぷいと視線を逸らす。
怒った顔は、描いてもらった絵の中のとは似ても似つかない。
これを描いた奴はいったい、いつどこでどんな色眼鏡をかけてを描いたのだろう。
そして、いつの間に夕香とのツーショットなど描かれたのだろう。
夕香を学校へ連れて来たことがない豪炎寺は、描かれた絵のモデルとなった場所を考え不安になった。
まさかとは思うがあの美術部員、の熱烈なファンにして追っかけにしてストーカーか。
豪炎寺の中で、親切な美術部員への警戒レベルが引き上げられた。
「これ後で風丸くんにも見せたげよーうっと! えへへ、可愛いって言ってくれるかな!」
「言うんじゃねぇの? 風丸の『可愛い』は口癖みたいなもんだし」
「む、なぁんかその言い方じゃ風丸くんがお世辞で言ってるみたいじゃん! 風丸くんはマジで可愛い子にしか可愛いって言わないの!」
「・・・俺、たまにのポジティブさがすっげー羨ましくなる・・・」
「じゃあもっと私を見習うこと。わかった半田?」
「たまにだからな。調子に乗るな、ったく・・・」
まあでも、こんなに可愛く、いや、そっくりに描いてもらったらポジティブにも調子にも乗るのかな。
俺とも結構一緒にいるんだけど、やっぱ俺はモデルとしてもぱっとしなかったのかな。
それに仮に描かれていても明らかに引き立て役か背景だっただろうし、だったら初めからいない方が良かったのか。
半田はお礼にカフェオレあげるんだと意味のわからないはた迷惑なお返しを思いついているに、やるならギフトセットのにしとけとアドバイスを送った。
今後は許可をいただければこんな感じで紹介していこうと思うと決めたのもつかの間、初っ端から事後報告