色気も頭も足りてない
また、どこかで何か余計な知識を身に着けてきたのだろうか。
豪炎寺は机の前で満面の笑みを浮かべている幼なじみをちらりと見つめ、手元のノートに視線を落とした。
今はくだらない遊びに付き合っている暇はない。
試験は近いのだ。
今すべきなのは試験勉強であって、間違ってもの相手ではない。
遊ぶのはこの後いくらだって付き合ってやる。
次行く予定のサッカーの試合のチケットも既に手配済みだ。
「あのね、この間ドラマで観たの! あっマンガだったかな、まあどっちでもいいんだけど観たのよ!」
「理科が得意になる勉強法か?」
「ちーがーう! そんなもん観るわけないじゃん、観てわかんないものを観るなんて時間の無駄じゃん!」
「そうか、だったら見てわかるように勉強しよう」
「もーう話聞いてる? あーわかった、焦れてるんでしょー様が何やるか知ってるから、早くやってほしいなって焦れてるんでしょー! そりゃそうだよね、だって修也も一緒に観てたもんねさっすが修也くんやぁらしー」
「、」
言われ放題の状況はさすがに頭にくる。
今が大事な時期だとには何度言い聞かせればいいのだ、一日一回じゃ足りないのか。
本日2回目のお小言を告げるべく顔を上げた豪炎寺は、想像を遥かに超えた至近距離に現れたの顔に開きかけた口を再び閉じた。
足りないのはお小言ではなく、一般常識だったようだ。
豪炎寺は勉強机の端に足を組んで座り、前のめりにこちらを覗き込んでいるの肩をそっと押した。
えーなんでーと上がる反発の声には無視を決め込み立ち上がり、組まれた足を整えてやる。
足を組むと姿勢が悪くなるとは言ったことがなかったかもしれない。
スカートを穿いた状態で足を組むなど論外だ、どこで誰がどの角度から見ているのかわかったものではない。
机の上に座るなとは、普通は座らないので言うまでもないと自己完結していたがやはり釘は刺しておくべきだった。
言わなければわからないでしょと以前どこかのタイミングで泣きながら言われた記憶がないわけではないが、思い出したくない過去なので忘れた。
「もーなんでそんなことするの!」
「それは俺の台詞だ、どうしてそんな行儀の悪いことをするんだ」
「だってテレビでやってたじゃん! 足が綺麗な女優さんが色っぽく笑いながらイケメン見下ろしてたじゃん。修也も観てたじゃん足とかガン見してましたー!」
「観てない! ・・・いや、見てはいたが凝視はしていない。大体、テレビで観たことをどうして実践するんだ」
「だって私はこの通り可愛いし、修也だってちょうどイケメンだから再現したくならない?」
「ならない」
「えーそんなー」
「」
なおもぶうぶうと文句を言い連ねるの前に立ち、両腕を広げる。
何をされるのかわかっていないらしいが、首を傾げて鏡のように同じ動作をする。
危機感がないと思う。
こうやって、他人の例えば鬼道の前でも似たようなことをしてしまうのだろうか。
いや、鬼道はそもそもここに至るまでの道を見つけられないか。
豪炎寺はの脇の下に手を伸ばし体を持ち上げると、机の上から強制排除した。
しかもミニな