※余所様のお宅の子とコラボってます。苦手な方はご注意ください。










ちゃんはもうちょっと危機感とかを覚えるべきだよ」

そう口にすれば心外だと言わんばかりの表情を浮かべる。
だってモテ期が普通の人に適応しているレベルで彼女に訪れているならばまだしも、一般人からかけ離れた人ばかりに好かれているではないか。
しかもそれだけならばまだしも変な人にまで及んでいるではないか。
不審者対策にアイアンロッドを持ち歩く女子中学生など聞いたことがない。
警戒心を持つことはいいことだけど、武器を持つレベルで危ない人に狙われているとなると心配だ。

「守ってくれる人がいいのにね」

幼馴染みくんはメンタルが弱いし、天才ゲームメーカーくんはインパクトと財力はあるが、いまいち決定力に欠ける。
モヒカンはもはやあいつが不審者のようだ。
そもそも彼女は一般人からのフラグに気づかずに叩き折るタイプな気がする。
とはいえ一般人だと守れるかどうかが微妙なところだ。
一般人でどっかの誰かさんを思い出したけれど、あんな中途半端なやつではダメだ。
それと、何となく、何となくだがそれは嫌な気がした。何でかはわかりたくない。

「それはそっちの方が深刻でしょ?」
「えっ?」

どう言うことだと聞き返そうとしたけれど、彼女の笑顔に制される。
彼女の言いたいことがわからないわけではない。
そう、私はどうも好きな人の前に出ると素直にか気持ちを表せないようなのだ。
そもそも私があいつを好いていると言う事実が悔しいと言うレベルだ。どうしようもない。
というか、なぜ彼女が知っているのか。
目を瞬かせて彼女を見れば、その口許は、楽しそうに弧を描いている。

「そんなに分かりやすいのかな?」

ため息をつかんばかりの声が出た。
たぶんため息のかわりに出た言葉がこれなのだろう。
その私の言葉を笑顔で肯定された。
なんということだ。というか、ちゃんに気づかれているほどなのになぜ肝心のあいつは気づかないのだ。
気づいてほしいと言う反面、気づかないでいてくれと言う私の気持ちがぐるぐる回る。

「こんなに分かりやすいのに気づかないあいつはバカね」
「そう、バカなんだよ」

今度こそため息が漏れた。
そういえばみんなが生暖かい目で見てくるが、私の分かりやすさゆえか。
なんて今さらどうでもいいことに気づいてしまった。
それほどまでに分かりやすいと言うのに、ほんとあいつはそんなそぶりすら見せようとしない。
全くもって、不公平だと思う。
口を尖らせる私にちゃんはでも、と声を出す。ん?と聞き返せば、一拍おいて続きが返ってきた。

「五十歩百歩ってやつかもね」
「どういうこと?」
「さあ?」

まさか私もバカだと言うのだろうか。
確かに!それは否定できないけど、中途半端な半田のやろうと同列なのは少し、いやかなり気にくわないわけだ。
むう、と唸れば彼女はきれいに笑う。
さすがちゃん。伊達に女神と呼ばれているわけではない。
彼女のやることならばきっとその凶悪なアイアンロッドを振り回す姿すら絵になるのだろう。
そう思うと少しだけ怖い。アイアンロッドを振り回すちゃんを止められる人がいるのだろうか。
いやいないだろう。
なぜならばその境地に至るほど、追い詰められる状況にまで陥ると言うことは、すでに他の人の手におえる状況ではないと言うことだ。
いや、一人だけ心当たりがいた。
彼女といると、お花畑を産み出すことのできる彼だ。いや待て思考が逸れてきたぞ。

「なんであいつなのかしらね」

そう呟いた彼女に、私が聞きたいよ、なんて小さく返した。
そうだ、それがわかるのならば苦労はしない。
なぜ私はあんなに眩しいほどの(ちょっと変な)サッカー部の中から、あんな平均から一歩も出れないような男に惚れたのだろう。
もっと他にいるだろうと自分でも思っている。そんな半田ですら私の身の丈にはあっていないように感じるのだからよも末だ。
私は平均以下ですか。そうですか。

「世の中は不条理だ」

やつの顔を思い浮かべながら呟いた言葉は当然のごとく彼に届くことなく空気に溶けた。




恋する気持ちはきっと誰にも、本人にすらわからない


その理由も、意味も。




紫苑さんからいただきました、二度目ですありがとうございます紫苑さん!
相変わらずツイッタでやんややんやと半田について騒ぎ立て、時には発禁もの話に発展することも多々あるドッペルさんです。
ドッペルもいきつくとなかなかすごく、お礼代わりに書いたイナズマでは初めてのようなそうでないような、隔離したとこにあるあれを書き上げたタイミングもほぼ一緒でした。
恐るべきドッペルです、お会いしたのですが顔はあまり似ていませんでした正直ほっとしました。
半田の癖に片想いされているなんて半田にちょっとイラッとしてしまいますが、紫苑さんの書く半田はどこかしら影があったり影が薄かったりして、
我が家のただただひたすら不憫な半田とはちょっと違って楽しいです。
素敵な作品を書いて下さった紫苑さんのサイトはリンクページからいけますので、下衆な作品に飢えた際はぜひお訪ね下さい。



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