こんにちは10年後 -7-
気付いていたのか知らなかったのか、今となってはもうわからない。
こうなってしまった以上はどうでもいいことなのかもしれない。
過程がどうであれ、これが結果なのだ。
巡り巡って中学時代の知り合いに戻りはしたが、そうなるまでにイケメンフツメン紳士騎士と出会ってきたので、今更乙女チックな考えは持たない。
10年会わない間にいろいろあったなあとしみじみと考えていると、ぐらりと体を内側から揺さぶられは小さく呻いた。
何考えてたと尋ねられ半田のことと返すと、嘘つけと早々に嘘を見抜かれ額と思しき部分に唇を落とされる。
額だと断言できないのは、気を利かせたのかプレイの一環なのか視界が遮られているからだ。
確かに周りが見えないと自分が今、誰に抱かれているのか一見するとわからない。
閨での声なんていくらでも変わるし、癖で見分けられるほどの手練れでもないからスリル感しかない。
やっぱり流されちゃったなあ、一気に下流まで流されまくる性格どうにかしないとこのままだと婚姻届に判でも押しちゃいそうだなあ。
は半田が落ち着いたことを見届けると、ごろりと寝返りを打ち邪魔でしかなくなったネクタイをもぎ取った。
「いかがでしたか、親友の若々しい肉体は」
「お前、あいつとでもいつもこんなに素っ気ないのか? ギャップもそこまでいくと一種のプレイだな。もう少しムード出してやれよ」
「乗り気じゃないのになんでムードとか出してあげなきゃいけないの。狭いし痛いし暗いし、これなんて拷問?」
「じゃあ次はライト点けたままするか?」
「次はありませんんー。あーあ、半田なんかダーリンにぼこぼこにされちゃえ」
「・・・」
反則だ。
今このタイミングで名字ではなく名前で呼んでくるのは反則でしかない。
動揺を隠しなぁにと努めて冷静に答えると、無理だよと言われ思わず喉がひゅうと酸素を吸い上げる。
これ以上揺さぶらないでほしい。
もうこれ以上、心の中から彼の存在を儚いものにさせないでほしい。
いつまでも、どこまでも好きでいさせてほしい。
親友が勝つしかない戦いに持ち込まないでほしい。
「これであいつ、目が覚めるかな」
「・・・・・・」
「ああ、殴りたいんだろ? いいぜ殴りたいだけ殴れよ。お前今でも鉄パイプ持ってんのか?」
「半田、いや、真一」
「あ?」
「みんなが起きる朝はまだよ」
「・・・だな」
都合が良くて虫が良くて優しくて、けれども優しすぎて優しさに慣れないこの身には半田の優しさが痛すぎる。
逃げられない、逃げる勇気もない朝がきたらどうせ優しくも甘くもない現実と向き合うことになるのだ。
会いたいはずなのに会いにくい人たちとも顔を合わせなければならないのだ。
そうだとしたら、せめて何も見えない、見なくて済む夜だけは夢を見ていたい。
ムードとやらも出してやるか。
は優しさという名のぬるま湯の源泉へ向き直ると、そっと体を寄せた。
なきながら、あいを乞う