3月20日、この日が何の日かご存知だろうか。
知らない人が約9割だろう。
Step:×× プレゼントをもらいました
~今更初登場ですか~
コーディネイターとナチュラルが休戦状態になってから数ヶ月。
の姿がコーディネイター達の居住地であるプラントから消えた。
しかし心配する事はない。
今度の行き先はちゃんと彼女の両親も把握しているし、彼女が向かう先の人々も知っている。
直前にその事を知った婚約者、つまりイザークも急ぎ彼女に同行した。
2人が向かった先はアスランとキラ、そしてラクスの待つ場所である。
「!! やっと会いに来たんだな!
・・・イザークも。」
久々に姿を見せた麗しの従妹に抱きつかんばかりに駆け寄るアスラン。
ついでのようにイザークにも一応声をかける。
イザークにしてみれば面白くない事この上ない。
「アスラン久し振り。あっ、ラクス!!」
アスランの肩越しに見えるピンクに向かっては大声を上げた。
、と嬉しそうに言って駆け寄るラクスと2人できゃっきゃと再会を喜びあう。
戦争では敵味方に分かれてしまったけれど、この2人は元は大の仲良しだ。
「、よく来てくれましたわ。
キラと2人でずっと待っていましたの。
お誕生日おめでとうございます、。」
「ありがとう!!」
今日は3月20日。
・17回目の誕生日だった。
「ほんと変わんないよね、って。昔っから気が強くて。
でもイザークだっけ? 彼とは気が合ってるんだろうね。
でないとは結婚しないし。」
5人でテーブルを囲んでわいわいと話をする。
と言ってもイザークにしてみればキラはストライク、フリーダムのパイロットであってあまりいい印象は持ってはいなかったのだが。
「キラも全然変わんない、昔のまんま。
女の子みたいな顔してさ、かっわいー。」
「どういうこと、?」
キラがにこにことした笑顔を絶やさずに聞き返してくる。
美少女に可愛いと言われて喜ぶ男はそういない。
「・・・、男に可愛いとか言うのは止めろと前にも言っただろうが。」
「あらあら、すっかり仲良しさんですのね。
以前アスランに世界で一番お似合いでないカップルと聞いていたのですが。」
そうでしたわね、とアスランに同意を求めるラクス。
苦笑しつつ曖昧に頷く彼を見てイザークはブチ切れた。
「アスラン、貴様ラクス嬢にまで何を吹き込んでいるんだ!!」
「俺はただお前と親戚になるのが耐えられないんだよ!
はまだ17だ。今からでも他にいい男が見つかる!!」
「なにぃっ!?」
容易く挑発に乗るイザーク。
結局この2人はそのまま外へ出て喧嘩をおっぱじめてしまった。
連れてきた意味があまり、いや全くない。
「ねぇ、アスランとイザークっていっつもああなの?」
「イザーク様はあのような方でしたのね。
私はもっと紳士的な方だと思っておりましたわ。」
目の前の騒ぎを平然として眺めていたにキラはそっと尋ねた。
「ラクスが見ていたのはぶ厚い化けの皮を被ったままの彼。
そうねぇ、いつもは逆なんだけど、アスランは私と彼の関係が気に入らないだけなのよ。」
「愛されてるね、。
てゆーか、アスランちょっとウザくない?」
キラの言葉に無言で頷く。
それは愛されている事の肯定なのか、はたまたアスランがウザい事に対するイエスなのかはわからない。
おそらくどちらにもだろう。
「そうですわ! 私にプレゼントを用意しましてよ。
受け取ってくださいね。」
ラクスがに渡したのは桃色のドレス。
きっとコンサートの時にでも、たった1回使ったきりのプレミア物の衣装なのだろう。
意外にも好みの女の子らしい可愛いドレスだ。
「サイズも一応直しておきましたわ。
今度その姿をメールで送ってくださいね。アドレスはそのままですわ。」
「わぁっ、ありがとうラクス!
可愛いー!!」
実際がこういった凝ったドレスを着るのは1年のうちのほんの数回のパーティーの時だけだ。
続いてキラもちょっと出しづらいんだけど・・・、と前置きしてテーブルの上に小さなディスクを置いた。
「僕こう見えてもただの無敵の一般人ってだけで、アスラン達みたいに無駄なお金持ってないからさ、こんなのしかあげられないんだけど・・・。
これ使えばプラントの住民票とか勝手に見たい放題だよ。
これでに関する情報探すの手伝ってよ。
こういうのいかにも苦手そうだけどさ、これ使えばそんなに難しい事ないから。」
「ハッキングってこと?
一応言っとくけどね、私だって一通りの情報処理能力はあるの。
・・・ま、見つけたいのは共通の願いだし、ありがとうキラ。
早速使ってみるね。」
なんともキラらしいプレゼントだ。
彼の能力の集大成とも言える。
和気藹々と3人で談笑している所にようやく戦闘の終わったアスランとイザークが戻ってきた。
テーブルの上に置かれているドレスやディスクを見て、アスランもいそいそとプレゼントを置く。
ハロではないことにとりあえずほっとする。
アスランは自作のプレゼントを前に説明を始めた。
「が星とか空が好きなのは知ってたんだ。
だからプラネタリウム(小)を。
地球のあらゆる地点から見える星々だよ。
プラントじゃそういうの見れないからね、」
「あ、ほんとだ!! オリオン座が見えるよ、ほら見てイザーク!!
ありがとうアスラン! さすが私の事よく知ってる!!」
ににっこりと微笑まれ頭を掻くアスラン。
顔も心なしかほんのり紅い。
「星だなんてアスランロマンチックだね。」
「そうですわ、私にはピンクちゃんやネイビーちゃんしか下さらなかったのに。
さぁ、イザーク様のプレゼントはなんでしょう?」
4人の瞳がイザークを見つめる。
イザークは口元をにやりと歪めると、の顔を自分の方へ向かせて強引に口づけた。
突然感じる唇の感触に酔うよりも前に驚いて、目をぱちくりとさせる。
「あ。」
「あらあら。」
無意識のうちにキラはアスランの目を自分の手で塞いだ。
こうでもしておかなければ、この従妹溺愛男は何をしでかすかわかったもんじゃない。
ラクスは口元に手を当てたまま、心底楽しそうに友人とその婚約者を眺めている。
「う゛っ!!」
不意にイザークの身体が揺れ動いた。
そのまま床へと崩れ落ちる。
肩で荒い息を吐きながらは冷たく言い放った。
「最悪。場所と状況をわきまえなさい。
ごめんねキラ、ラクス。
あぁ、アスランは見てなかったのね。良かった。」
ようやくキラから解放されたアスランが見たものは、床でへたばっているイザークの姿だった。
翌日、プラントへと戻るイザークとはキラ達との別れを惜しんでいた。
いつまたこちらに来れるかわからない。
平和ほど儚く脆いものは無いのだ。
「、また遊びに来て下さいね。
私もできればそちらに行きたいのですが・・・。」
「今度来て。家はいつでもラクスを歓迎するわ。」
手を握り合っていつまでも離れようとしない2人。
美しい女の友情の典型的な例である。
彼女達の後ろで男3人はぼそぼそと語り合った。
「ねぇ、君本当にの事愛してる?」
「当然だ!! たとえガンダムに囲まれようが、俺はあいつを救い出す。
命に代えてもな。」
「それが困るんだよ。
・・・イザークが死んだらが悲しむだろ・・・。
お前はの婚約者なんだからな・・・。」
イザークは思わずアスランの横顔を見つめた。
今まで自分ととの仲を認めなかった彼が、ついに容認したかのような発言をしたのだ。
多くの人に祝福された方がもちろん嬉しい。
アスランも本当はいい奴だったのだ、とイザークは心の中で彼に対する考えを大いに改めた。
ライバル心はものすごく残ってはいるが。
「アスラン、貴様もいい所がある 「でも!! やっぱりどっか認められないんだよな。なんかこう、娘を嫁にやる父親の心境っていうか?」
前言撤回。
やはりアスラン・ザラとはこういう嫌な男だったのだ。
「アァァァスラァァァン!!
貴様、いつかこの手で絞め殺してくれるっ!!」
「なに危険な事言ってんのよ!!」
よく晴れた空の下、キラとラクスの朗らかな笑い声とイザークとの怒鳴り声、そしてアスランの大きなため息が響いた。
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