世にも恐ろしい、ある意味運命的な出会いを果たしてしまったとイザーク。
2人に待ち構えているのは・・・、同僚。














Step:02  兄妹じゃないです
            ~アスランとの再会、そして愉快な同僚達~












 がさつでアスラン似の女と婚約者に言われたは本当に仮面隊長、クルーゼに用があったのだ。
事実を知らなかったにしても、イザークの言葉は簡単にの彼に対する敵愾心を増やしてしまった。
自業自得というか、報われない連中である。
そんなこんなのいきさつで、仮面こそ奇妙だが、尊敬に値するクルーゼ隊長と信じたくはないが、
自分の婚約者が隊長の部屋に入っていくのを見送ると、イザークはへなへなと脱力した。
それでも座ることなく、アスラン達を彼女に引き合わせるために先程までいた部屋に呼びに戻って行ったのは、
案外ダメージを受けていなかったからかもしれない。
そんなはずがなかった。
イザークはふらふらと同僚達の待つ部屋へと向かっていった。







 「イザーク、お前顔色悪いぞ?
 どうかしたのか?」
「・・・うるさい。」






明らかに部屋を出て行く前よりも蒼白な顔をしたイザークを見てディアッカはぎょっとした。
しかし、当のイザークは全く彼の言葉など上の空のようで、アスランに向かって言った。




「貴様も苦労していたんだな・・・。
 貴様が女装したのもわかる気がする、今ならな・・・。」
「だから俺はそんな事してないっ!!
 人違いだっ!!」



「ああ。人違いならよかったんだ。
 まさかあんな女が婚約者とはな・・・。」






大きなため息とともに吐き出されたイザークの言葉に3人は容易く言葉を失った。
あのイザークに、女っ気のまるでないといっても過言ではないあのイザークに、
よりによってあのイザークに婚約者が出来た。
その事実は3人の年頃の少年達の好奇心を引き出すのには充分だった。





「イザーク、その婚約者さんは今、どこにおられるんですか?
 僕達、ぜひ挨拶したいんですっ。」



とニコルが言えば、





「そうだな、どんな子? 可愛い?
 つーかなんでここに?」
「そうだよな・・・。
 でも、イザークの婚約者となれば、相当気の確かな子じゃないと・・・。」







ディアッカの婚約者に対する基準もおかしいが、アスランもかなりひどいことを言っている。
が、今のイザークにはそんな言葉すらもろくに聞こえていなかった。




「知らん!! そんなに見たいのなら隊長の部屋の前にでも張り込んでおればいいだろうがっ!!
 あんな奴・・・、あんな女のどこを母上は気に入られたのだぁっ!!」






イザークの自棄にも聞こえるその叫びを適当に聞き流して、
クルーゼ隊エリートパイロット達はいざ隊長の部屋へと駆けて行った。





















 が隊の制服、すなわち赤服を身につけ、再びクルーゼ隊長の部屋へと戻った直後、
扉の付近でものすごい音がした。
その音に苦笑しながらも隊長自ら扉を開くと、案の定、そこにはイザークの婚約者見たさに
出待ちしていた部下達の姿があった。








「入りたまえ。イザークの姿が見えないようだが。
 まぁ、彼もすぐに来るだろう。」







3人がほど同時に入り、少ししてイザークも一礼して部屋に入っていった。
すると目の前に赤の上着に、短めのスカート、それに白いブーツを身につけた少女が背中を見せて立っていた。
急に騒がしくなったためか、アスラン達が部屋に入ってくると、くるりと彼らの方を振り向いた。








「美少女!!」






ディアッカが感激の声を漏らす。
小躍りせんばかりの勢いだ。
確かにはそんじょそこらのコーディネイターの少女達よりも、さらに上を行く容姿の持ち主だ。
彼女の美しさで、黙っていさえすれば、ディアッカなど数分でノックアウトできるだろう。
はいきなり美少女と言われて目を丸くしたが、別に咎めるふうでもなく、
にこりと彼に向かって微笑むと、アスランの方に身体ごと向けた。
かと思うと、







「アスラーーーーーーーン!!」
「なんだっ・・・。ってうわっ!!
 !?」








はいきなりアスランに抱きついた。
突然の出来事に戸惑う彼だったがその手はしっかりとの身体を受け止めている。
彼女はアスランから離れるとにこにこと、





「な~んだ、アスランここにいたんだ。
 私、アスランがどこに配属されてるのかわかんなかったから連絡しなかったのに。」
「・・・、なんでここにいるんだ。
 叔母上は?の家はどうしたんだ?」



「だって、私今日からクルーゼ隊の一員だもんね。
 お母様もお父様もちゃんと知ってるし。
 ・・・ちょっと、ううん、かなり嫌な人には会ったけど。」







そう言うとは彼らの後ろでわなわなと震えているイザークを一瞥した。
2人の間に瞬間火花が散る。
イザークはずかずかとアスランとの間に割り込むと、2人にやはり怒鳴り散らした。








「貴様らはいったい何なんだ!!
 似たような顔で・・・!! 仮にも俺の・・・!!」
「婚約者なんて信じらんない、とでも言いたいんでしょ。
 こっちだって同じよ。幼なじみとの再会に水差さないでくれる?」






まさに一触即発の状態の2人だが、間に挟まっているアスランは硬直していた。
・・・、まさか自分の幼なじみであり従妹でもある彼女がこの男の婚約者だなんて・・・。
今の話を聞いている限りでは合わないなんて次元ではない。
下手をしたら武器まで持ち出しかねない状況だ。
大体はどうなってしまったのだ。
以前から気は強くてたまに自分達を困らせてはいたが、さらに磨きがかかっているではないか。
叔母上方はいったいにどんな教育を施したのだろう。
アスランの脳内は混乱をきたしていた。





「あのですね、よかったら自己紹介してくれませんか?
 僕たちあなたの事何にも知らないんですけど・・・。」





稀に見る美貌を持ちながら、憎めない程度のいたって可愛らしい気の強さ(ニコル談)を秘めるに、
平然と声をかけたのはさすがはニコル、と言うべきである。
するとはイザークから目を離すと、忘れてた、とか言いながら4人の前に立った。






です。今日からクルーゼ隊の1人になります。
 え~っと16歳。アスランのお母様とうちの母が姉妹、つまりアスランとは従兄妹ね。
 あとはそうねぇ・・・、なにかある?」
「はいはいっ!!俺、ディアッカ・エルスマン。
 あのさ、スリーサイズは?」
「秘密。教えるわけないじゃない。
 面白い人ね、よろしく、ディアッカ。」






笑顔で軽くスルーされたディアッカは切なくなりながらもその笑顔にまたやる気が出てきた。
いったい何に対するやる気だろうか。







「ニコル・アマルフィです。
 って、もしかしなくてもイザークの婚約者ですか?」







ニコニコとした表面上邪気のない笑顔が魅力的な緑の髪の少年、ニコルは
やはりまた邪気のない笑顔を絶やさないまま問題の核心を突いてきた。
そして彼の質問に一瞬笑顔が固まる



「そうねぇ・・・、一応そうらしいけど、私もなんでジュール家の御曹司の婚約者が私になったのかとか、
 いきさつは全然知らないのよね。ただね、これは私の意志じゃないから。
 現に彼と会ったのもさっきが初めてだし・・・、ねぇ?」










そう言うとは、いきなりさっきとは打って変わった曖昧な、
笑いかけたような顔でイザークの方をちらりと振り返った。
そのとたんにイザークの顔が赤くなった。
イザークにとって、に初めてとった不覚の出来事であった。
と思うのは彼だけだが。






「まだ正式に決まったわけじゃない。
 俺のような心の広い男しか婚約するにしても相手がいないんだろう。
 俺自身はこいつに対しては興味の類は一切ない。」






ディアッカの『またまた照れちゃって~』という場違いな声と、
アスランの『俺の従妹を悪く言うな!!』と言ういかにも過保護的発言が室内に響いた。
確認するが、ここは隊長もまだ在室している隊長の部屋である。













「いいんですか?あんな事言われて怒らなくて。」



「別に~。だって興味あるとか言われても逆に困るし。」




クルーゼ隊を揺るがす事件は以外に早く起こった。









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