1.仮面の下
ざわめく宮殿を颯爽と歩く銀髪の青年がいる。
旅をしている間に約束させた仮面舞踏会の最中である。
誰よりも守備力のありそうな仮面を身につけている彼は、注がれる視線に喜びを感じていた。
(遂に、遂に俺の時代の幕開けだぜ!)
1人静かにガッツポーズをしている男を、かつての仲間たちは哀れみの籠もった目で見つめていた。
無論当人は気付いていないのだが。
「ねぇ教えてあげようよ。ククールの顔がすごいことになってるって」
「ほっとけばいいのよ。それが世の中の女性のためになるんだから」
「でもほんとに着けてくるとは思わなかったなぁ。あれは舞踏会で被るもんじゃないよ。」
ファントムマスク、それすなわち幻である。
マヌーサとかいった呪文に耐性がある彼らが見ても全く問題はないのだ。
だが、幻を見ている一般人の方々はどうだろうか。
ククールの整った容姿はエリミネーターにでも見えているかもしれない。
ちなみにわざとかかってみたヤンガスが見たククールは、大王イカだった。
「ククール、当分は恋人できそうにないでがすな」
「いいんじゃない? 独身貴族ってやつで」
「あ、私今ククールが死神貴族に見えた」
ククールの仮面舞踏会デビューは、散々な結果に終わったのだった。
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