3.揺れる白と、映える朱。
『お誕生日おめでとうございます』
たった一言書かれたメモと同時に受け取ったプレゼントを見て、イザークはいよいよぶち切れそうになった。
別にプレゼントが欲しいわけではない。
しかし、いくら定番とはいえ苦手なものを送りつけてくる婚約者がどこにいるだろうか。
あれだけ張り切っていたからもしやとは思ったが、まさか本当に作るとは。
イザークは盛大にため息をついた。
「大体、本人が来ないとはどういう料簡をしているんだ!」
「来てるじゃない。どこ見てんのよ」
自室に戻り叫ぶと、カーテンの隙間から呆れたような声が返ってきた。
いい年してみっともないと呟くと、イザークの前まで歩みにこりと笑う。
「ちょっと遅くなっちゃったけど、お誕生日おめでとう」
「・・・1週間ばかり遅いな」
「仕方ないでしょ。だから利息分も含めて特大ケーキ作ったじゃないの」
「それは俺に対する新手の嫌がらせか?」
素直にありがとうって言ってくれないのねと俯く恋人に、イザークは慌てた。
彼女を困らせたいわけではない。
全ては素直に喜べない自分が悪いのだ。
イザークは少々いかれてしまった頭でそう思い直すと、極力優しく彼女の肩を抱いた。
「・・・悪かった。ありがとう、ケーキだってちゃんと食べるに決まっている」
「当たりが出たら、もひとつプレゼントあげるね・・・」
「・・・お前またロシアンケーキ作ったのか!?」
「失礼ね! 今回は頑張ったのよ、出血大サービスなんだから!」
「ほう? じゃあバレンタインデーのさらに上をくれるということか」
イザークは破壊力抜群の笑みを浮かべると、メモに添えてあった真っ赤なリボンを恋人の白い首に巻きつけた。
変態馬鹿白髪おかっぱと罵られながらも、そっと耳に囁くことに成功する。
「当たりのプレゼントはお前でいい」
「いや激しく遠慮したいのですけれどもイザーク様」
「遠慮するな。いいだろう、今年ぐらい」
当たりのケーキは誰の口に入ったのか。
広大な庭に飼われている犬を射殺さんばかりの目で睨みつけているイザークがいた。
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