6.グラスに映る瞳
かちんとグラスを合わせる音が部屋に響く。
美味しいねと笑顔で杯を空け続けるのはエルファである。
「酒とか一番弱そうなのに・・・」
「だよなー。いくら果実酒ったって酒は酒だし」
リグとバースが小声で囁き合っている傍で、エルファは飲み続ける。
ほんのりと上気した頬も可愛らしいが、それはあまりよろしくない傾向を物語ってもいる。
「エルファ、一応俺たち未成年だし、さ。すこーし自重しよっか」
「えー、ねぇバース、もう少しいいでしょ、ね?」
「いや、俺は良くてもエルファがまずいって・・・」
なんとかしてエルファの手からグラスをもぎ取ろうとするバースと、それを無表情で眺めるリグ。
彼のグラスも確実に空になっているが、咎める者は誰もいない。
「3人とも、あんまり遅くまで起きてたら朝・・・、ちょっと!! なんなのこの酒臭さは!!」
剣の鍛錬を終え部屋へと戻ってきたライムは、辺りを漂う酒の匂いに眉を上げた。
つかつかとリグに歩み寄りグラスを取り上げ、ぺしりと頭を叩く。
未だに奮闘を続けているバースとエルファの元へ向かい、エルファの肩をがくがくと揺さぶった。
「ほらエルファ、もう飲むのやめなさい。明日動けないでしょ」
「でも・・・。あ、ライムも一緒に「飲まないから!」
とろんと目までもが酔いを見せてきたエルファから強引にグラスを奪い取る。
明日は二日酔いかとため息を吐くと、後ろで控えている男2人を睨みつける。
「こんなになるまでほっといて・・・。ラリホーするとか、手段はあったでしょ!」
「「ごめん・・・」」
翌日、ライムの危惧どおり二日酔いで起き上がれないエルファがいた。
元に戻る