6.グラスに映る瞳
趙雲が手傷を負った。
その知らせを受けたは彼の自宅へと奇襲をかけた。
大丈夫ですか趙雲殿と叫びながら突入し、周囲をよく見ていなかったため段差でつまずく。
足先がじくじくと痛むが、これくらいの痛み趙雲殿に比べればと思いそのまま彼へとにじり寄った。
戦場でも滅多に見ない突撃を目の当たりにした趙雲が驚いたくらいの勢いである。
「趙雲殿お加減はいかがですか!?」
「お、落ち着いてくれないか殿。私は平気だ、むしろそなたの方が・・・」
「私ですか? い、嫌だ、何を言っちゃって・・・」
「先程戸口で人がつまずく盛大な音がしたのだがなるほど、そこに座ってくれないか殿」
趙雲はを座らせると彼女の足にそっと触れた。
痛っと言って顔をしかめたことを確認してゆっくりと衣の裾をめくる。
じわりと滲み出ている血を見てため息をついた。
怪我人を見舞いに来た本人が生傷を作るなんて馬鹿げている。
趙雲は水を浸した布を傷口に当てた。
うーと呻き声を上げるに苦笑しつつ布を見下ろす。
真っ赤な血が布に染み込み、布がほんのり赤くなる。
「す、すみません趙雲殿・・・」
「これではどちらが怪我人かわかったものではないな」
「そう、ですよね・・・。もう何やってんだろう私」
「あまり傷を作らないでくれ。武人でもないそなたが傷ついていると知ると、私は心配でたまらないのだ・・・」
わかったなと念を押す趙雲のまっすぐな瞳に、頷く以外の選択肢を見つけられないだった。
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