10.明日
城内の十字路できょろきょろと辺りを見回している青年を見つけた。
空を思わせる色をしたマントを靡かせる、最近やって来た旅の賢者様だ。
賢者という大層な肩書きの割には気さくすぎるその性格は、城の人々にも好かれている。
「バースさん、誰かお探しですか?」
「あぁいた、エルファ。君を探してたんだよ。」
「私をですか?」
敬語は使わなくてもいいのに、とバースは苦笑した。
そうは言われても相手は年上だし賢者だし、無意識のうちにそうなってしまう。
「あのさ、明日の午後から暇だったりする?」
「えっと・・・、たぶん大丈夫です。」
「そっか。じゃあさ、明日一緒に「あ、王女様。」
エルファの視線がバースを飛び越えて、その先を歩いている王女に注がれた。
リゼリュシータ王女はにこりと笑うと、2人の元へと足を急がせる。
「エルファ、バース殿。こんな所で密会ですか?」
「はは、とんでもない。王女に見つかったら面倒じゃないですか。
それに、やるならもっと人目のつかないとこでしますよ。」
「うふふ、そうですね。
そうそう・・・、エルファ、明日の昼から私と薬草摘みに出かけませんか?」
「あ、でも・・・・・・・。」
エルファはちらりとバースを見やった。
するとバースはまた今度でいいよ、と微笑んだ。
内心は笑顔なんてもんじゃなく、悔しさでいっぱいなのだが、相手が王女なら仕方ない。
「ごめんなさいねバース。またの機会にしてくださいね。」
案外したたかな王女様だった。
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