2.無意識
ゆっくりと目を開ける。
視界に広がるのは、真っ白なシャツとはだけた胸。
寝ぼけ眼が一瞬で覚醒した。
気が付いた時にはもう遅い。
体の動きは思考を遥かに上回るスピードで、夫をベッドから突き落としていた。
「またやっちゃった・・・。」
これも軍人だった性なのか、職業病なのか。
どうも、寝ている自分に異性が近づくと応戦してしまう。
無意識下でも警戒しているのはすごいとイザークは褒めているが、正直なところ困っているだろう。
別にいけないことをしているわけでもないのに、こう毎度毎度ベッドから突き落とされては堪るまい。
今日だって、現に今起きた。
「ご、ごめんイザーク! ・・・また、落としたわよね、私。」
「あぁ、おかげでしっかり目が覚めた。」
「もう、どうしてこうなるかな・・・。」
んー、と背伸びするイザークをじっと見つめる。
遅く帰って来て疲れているだろうに、朝は乱暴に起こされる。
こんな奥さん、どこを探しても自分ぐらいしかいない。
「本心じゃないとわかっているからな。
そのうち慣れさせる。」
「よろしくご教授ください。」
優しい言葉についうっかり乗せられる。
こういう優しさは、騙しのテクニックの一環なのだ。
慣れさせるってそんな、あんまりだ。
「じゃあとりあえず今夜から・・・。」
「・・・・・・・。」
こんな素晴らしき突き落としで始まる朝は、とある某棒術の師匠の来襲まで続いたのだった。
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