9.やさしい色
べホイミを比べてみる。
同じ効果をもたらすのに、感じ方が違うのはどうしてか。
たとえば、元聖堂騎士団で回復系統の呪文をきちんと習ったであろうククールのそれは、混じり気がない。
こういうのを正統派というのだろう、腑に落ちない点も多々あるが。
ゼシカはともかく、ヤンガスがたまに唱えてくれるベホイミはぎこちない。
ただ、それだけ情熱が感じられる。
テンションが上がっている時などは、もれなくテンションもくっついてきそうな気分になる。
「でも、僕が一番好きなのは君がしてくれるやつだよ。」
彼女の呪文はとても優しい。
傷だけでなく、すべてを包み込んでくれる包容力がある。
そして、これは確実に錯覚だろうが、彼女のベホイミが一番効き目があるように思える。
だから、無意味に唱えてほしいなとかいう性質の悪い欲求が生まれてくるのだ。
「・・・ということで、お願いしてもいいかな。」
「ちょっ・・・。そのくらいのかすり傷は舐めてれば治るよ!」
ちなみにそのかすり傷とは、しましまキャットにかぷりと噛み付かれたものだった。
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