5.取り扱いには覚えあり
また喧嘩をしたらしい。
どうせ夕方には元に戻っているのだからそこまで喧嘩をしなくてもいいはずなのだが、
きっと2人の間では喧嘩も日課の1つなのだろう。
そして、そのとばっちりを受けるのも主に自分だ。
いい加減席を替えてくれないだろうか。
このままでは心労でどうにかなりそうだ。
「ほっときゃ機嫌直るんだからいちいち気にするなよ」
「直らなかったらどうするんだ」
「謝れ。は自分から謝るような奴じゃないからとりあえず折れとけ」
「それは嫌だ」
本当に手のかかる連中と知り合いになったものだ。
平凡な毎日を過ごしていない気がする。
平凡でない友人を持つとこうも日常が変わるものかと思い、果たしてこいつらは友人だと思ってくれているのかどうかと
不安になる。
どこもかしこもぱっとしないサッカー部員だとしか認識されていないかもしれない。
その可能性は大いにあった。
「ったく、それでもお前ら幼なじみかよ」
「9年近く幼なじみだ」
「9年付き合ってこれかよ・・・」
教室へ戻ってきたに、半田はいつものように話しかけることにした。
きちんと言葉を返してくれるあたり、今日はそこまで怒ってはいないようだ。
そうだとしたら早く片付けられる。
「、知ってるか」
「何を?」
「怒ってばっかいたら年取って皺が増えるぞ」
「マジ?」
「マジマジ。怒らせて皺くちゃにさせても責任取りもしない豪炎寺に怒ってたら、将来もったいないぞ」
「それもそっか。修也、私怒るのやめるわ」
頭が少し弱い子で良かったとこの時ばかりは思う。
豪炎寺の羨望の視線を受けるのも、こういう時でないと味わえないから新鮮だ。
「半田、今度ぜひの取扱説明書を書いてくれないか」
「断る」
くるくると表情が変わるの説明書など、筆を握っただけで目眩がしそうだ。
半田は他愛ない世間話を始めたを見つめ、小さく息を吐いた。
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