6.絶対、好きになんかなるもんか。
草が焼ける臭いが部屋中に漂う。
これで何度目だろうか。
貸している以上好きにしてもらって構わないが、備品や部屋を燃やされるのは困る。
フィルはお粥が入った鍋を脇のテーブルに置くと、そこが病人の部屋だということを承知の上で勢い良く扉を開けた。
「もう! 他のお客さんの迷惑になるから変なの焼くのやめて!」
「ほーら、やっぱフィルも変って言ってんじゃん。変なの飲ませるの反対」
「でもリグ、これはすごくよく効く薬草だってリゼルさんが・・・!」
「母さんがいう薬草はいつも不味いってのが相場なんだよ」
頭の上に氷嚢を乗せたリグが、看病に当たっているエルファにぶうぶう文句を言っている。
家が破壊されたため無償で宿の一室を貸しているが、ここまで傍若無人に振る舞われるとたまったものではない。
病人ならば大人しく看病されていろと、怒鳴りつけたいくらいだ。
「熱冷ましの薬ひとつ飲めないで何が勇者なのよ、もう・・・」
「フィルの言うとおりだよ。風邪はホイミじゃ治らないから頑張ってリグ」
「エルファももう少し厳しくやっていいんじゃない? ラリホーで眠らせてる間に口に詰め込むとか」
「俺、病人なんだけど」
フィルの進言を良案だと思ったのか、早速エルファが呪文の詠唱を始める。
寝ても死んでも薬草なんて口にするものか。
急激に襲ってきた眠気に対抗するべく、リグは再びギラを唱え薬草の焼却処分を図ったのだった。
元に戻る